トランプ就任でどうなる韓国…「米中どちらの味方か」の岐路に 米有力議員は韓国左派を“内通者”と非難

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「韓国の極右が危機を拡大」

 ハンギョレは社説も動員しました。「『民主主義の模範』韓国は米国にとっても利益だ」(1月13日、日本語版)でキム論文を以下のように非難しました。

・「単なる失言」として見過ごすわけにはいかない。実際、少なからぬ米国の要職者たちは、尹政権が早期退陣すれば韓国と日本を「対中けん制」に活用しようとする第2次トランプ政権の構想に支障が生じる可能性があるという分析をしている。
・韓国の極右がこの発言を積極的に活用し、嫌中・反中の「陰謀論」と「フェイクニュース」を拡散し、混乱を拡大している。米国の近視眼的な国益だけを考える人物らと韓国の極右が、悪意をもって現在の状況を歪曲し、危機を拡大して再生産しているわけだ。

 米国人の一部と韓国の極右が結託し、韓国左派への敵対感を煽っていると非難したのです。記事の最後の1文は「民主主義を回復したより堅実な韓国は、最終的には米国にとっても大きな利益になる」でした。

 米国人に「民主主義を回復する」左派の重要性を訴えると同時に、韓国人に対しては左派が政権をとっても韓米同盟は健在だと訴えたのです。

 朝鮮日報は再び左派を攻撃しました。キム・ウンジュン特派員がキム議員とのインタビュー記事「[単独]ヤング・キム『弾劾勢力は北朝鮮に融和・中国に従順…朝鮮半島に大きな災難を呼ぶ』」(1月17日、韓国語版)を載せたのです。

 キム議員は「弾劾勢力がこの状況を続ければ、混乱と反米宣伝が韓国でさらに拡散するだろう。北朝鮮と中国は虚偽の情報を広め、より大きな不和を植え付け、韓米同盟を弱める機会として活用しよう」と述べています。

「謝罪が足りない」という石破

――要は、左派が米韓同盟を壊すかどうか――との論争ですね。

鈴置:その通りです。近い将来の大統領選挙を意識してののしり合いです。尹錫悦大統領の弾劾はほぼ確実と見られており、弾劾後60日以内に大統領選挙が行われます。それを念頭に置いた駆け引きが早くも始まっているのです。

――なぜ、「共に民主党」は米国を怒らす文言を弾劾訴追案に盛り込んだのでしょうか?

鈴置:1回目の弾劾訴追案を提出した頃は米国からどう見られるかには考えが及ばず、とにかく弾劾に支持を集めるようと尹錫悦大統領に対する罵倒の言葉をかき集めたのだと思われます。

 それに左派は「親日」を批判しただけで「親米」には触れていないつもりだったのでしょう。でも、韓国人は「反日」を隠れ蓑に「反米」に動くと米国の外交専門家は見透かしています。

 韓国は「歴史問題で謝罪しない日本とは軍事協力できない」との言い訳を使って日米韓三角安保協力はもちろん米韓同盟からも逃げまくって来ました。中国の顔色をうかがうこの作戦は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が採用して以来、保守政権の一部も利用した韓国の常套手段です。

 副大統領時代のJ・バイデン(Joe Biden)氏は「謝らない日本」を言い訳に軍事協力から逃げる朴槿恵(パク・クネ)大統領に対し「本当は中国が怖いんだろ」と揶揄しています。『韓国消滅』第4章第1節「日本を見下し『独立』を実感」で詳述しています。

 日本では石破茂首相のように「日韓関係が良くならないのは日本の謝罪が足りないからだ」と信じる人が未だにいます(『韓国消滅』)第4章第2節「植民地になったことなどなかった」参照)。

 しかし、実態は韓国が米中間で二股をかけるために日本との関係を悪化させている側面が大きい。ちなみに、第4章の見出しは「日本との関係を悪化させたい」です。

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