常識に縛られる妻は「つまらない女」 不倫がバレて“しぶしぶ再構築中”の45歳夫が語ったホンネ
いつしか「つまらない女」と思うように…
息子にも宏一さんにも受験の意志がなかったため、小学校は地元の公立に入学した。息子は調子がいいタイプで、クラスの人気者らしい。妻にはそれもあまり好ましくないようだ。目立つと仲間はずれにされるのではないかと危惧し、調子のよさだけで世の中渡ってはいけないと息子に言うのを聞いて、宏一さんは「息子の好きにさせろ」と声を荒げてしまったことがある。
地道に生きてきた妻に敬意を抱いていたのに、いつしか「つまらない女」だと思うようになっていた。そんな自分の変化に宏一さんは驚いたという。
「いちいち意見は合わないけど、だからといって妻を責めるわけにもいかなくて。それぞれの価値観ですからね。ただ、妻は狭量なので僕を責めてくる。だんだん疲弊していき、帰宅して夕飯をとり、息子が寝てから、ときどき近所の居酒屋に出かけるようになったんです。それまで地元の人とのつきあいも息子関係以外にはなかなかなかったんだけど、居酒屋に行くようになって知人も増えました。新たな世界がまたできてホッとした」
よく顔を合わせる同世代の美奈子さんという女性と世間話をするようになった。既婚だが夫は出張が多く、子どもがいないため「ここで飲むのが唯一の趣味」と笑っていたが、彼女がいないとき店主に聞くと「バリバリのキャリアウーマンらしい」とのことだった。
「だんだんお互いの仕事のことにも触れるようになっていき、彼女が美容関係の会社を経営していると知りました。僕の会社よりずっと大きかったけど、経営論みたいなことも話せる相手ができて、だんだん彼女に興味がわいてきましたね」
めったに酔わない彼女が、1度、泥酔したことがある。彼は自ら送っていくと名乗りを上げた。彼女のマンションの部屋に入り、寝かしつけてから鍵をかけて、その鍵を新聞受けに入れて店に戻った。
「あらぬ噂をたてられるのは嫌だったから、ちゃんと店に戻りました。その一件で、店主や常連さんたちも信用してくれるようになった気がします」
次に彼女に店で会ったとき、「先日はありがとう。ごめんなさい」と言われ、「宏一さんが紳士でよかったね」と周りからも冗談が飛んだ。だが男と女はどうなるかわからない。周りが「単なる飲み仲間」と関係を決めたところで、ふたりの心の内はそうではなかった。
「あるとき彼女が『明日、早いから』と浅い時間で引き上げ、僕もそろそろと店を出ると、なんと彼女が物陰に隠れて待っていたんです。『どうしてもふたりで話したくて』って。それだけで気持ちが通じ合った。黙って彼女のマンションへ行きました」
妻にばれた
彼女とは体でも会話ができたと、彼はすごいことを言った。お互いの心がぶつかりあい、言葉にならない熱いものが行き交っていた。ふたりはそれから時間を絞り出しあうようにして逢瀬を重ねた。
「ただ、近所だし共通の知人もいるしと、かなりリスキーなつきあいですよね。でもそのスリルがさらに僕らを燃え上がらせた。彼女は『あなたとだと、どんどんよくなる』と言ってくれるから、男として自信がわきおこってくるんです」
リスクはじゅうぶんわかっていたのにやめられない。それが不倫の魔力なのだろうか。案の定、妻にばれた。愛美さんは淡々と「どうするつもりなの」と言った。「こんな人が父親だって言えるの」と責められ、「人間にはいろんなことがあるっていつか息子もわかってくれるさ」と言ってしまった。その言葉が愛美さんの怒りの火に油を注いだ。
「離婚しましょう、2度と息子には会わせないと言われて焦りました。ひたすら謝って謝って、離婚だけは回避しました。妻は傷ついたんだと思うけど、自分が傷ついたとは言わなかった。ただ『世間体が悪い』『息子に恥ずかしい人間にならないで』ということだけ。恋をするのが恥ずかしいことなのか、こんな親ではいけないのかは息子が決めることですからね。妻は僕が僕の両親みたいになるのを恐れたんでしょう。僕は僕で、不倫した母の血を受け継いでいるのかとおかしかったですね。母は本気の恋だったという話だったけど、僕だって美奈子には本気でした」
美奈子さんにことの顛末を打ち明けた。彼女は「ほとぼりが冷めるまで待つ? それとも別れるしかないのかしら。友だちに戻ろうか」とさまざまな案を出してきた。別れたくないのよと言われ、自分も同じ気持ちだと宏一さんは伝えた。
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