実は“女性読者”が支えていた「WiLL」「Hanada」の知られざる実態…安倍元総理の死去、ネット“陰謀論”時代の到来で“右翼雑誌”に活路はあるか

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雅子妃問題で多数の投稿

 編集部員に女性読者が“可視化”されたこともあった。「WiLL」2008年5月号が同年3月に発売されると、ドイツ文学者で“保守派の重鎮”と位置づけられていた西尾幹二氏の寄稿「皇太子さまに敢えて御忠言申し上げます」が大きな反響を呼んだ。

《これが、女性読者の心に火をつけることになった。投書だけにとどまらず、女性読者からの電話がひっきりなしにかかってきた》

《2008年6月号、7月号で読者から寄せられたコメントや手紙を誌面に多数掲載している。題して〈雅子妃問題 読者はこう考える〉〈「雅子妃問題」・「西尾論文」読者はこう考える〉。投稿者はいずれも匿名やペンネームになっているが、性別・年齢はわかる場合だけ記載されており、それを見ると40代から60代、それも女性の方が割合としても多い。これは掲載するご意見を選別する際にあえて女性のものを取り上げたのではなく、実際に女性からの投稿・書き込みが多かったためにこうなったものだ》

「WiLL」は2004年11月に創刊されため、昨年の2024年11月でちょうど20年を迎えた。この間、日本の首相の座には小泉純一郎、福田康夫、麻生太郎、鳩山由紀夫、菅直人、野田佳彦、安倍晋三、菅義偉、岸田文雄、石破茂──の10氏が座った。政権は自民党から旧民主党に交代し、さらに旧民主党から自民党に再交代した。この流れを振り返るだけでも、この20年が日本の政治にとってどれほど激動の時代だったか一目瞭然だ。

兵庫県知事選の衝撃

 また、この20年は「ネット右翼」が「ネトウヨ」に変質した時期とも重なり合う。さらに2021年に岸田政権が誕生すると、ネットでネトウヨとネトサヨが激論を戦わせることが少なくなったことも重要だろう。安倍晋三氏は2022年7月に凶弾に倒れ「Hanada」も「WiLL」も活力を失ってしまう。

 梶原氏は安倍氏という《「推し」がいなくなってからの『Hanada』はどうにも元気がなく、分裂後の『WiLL』に至っては数字狙いの陰謀論にいよいよ堕した感がある》と指摘している。

 昨年7月に行われた都知事選では石丸伸二氏が次点に躍進。同年11月に行われた兵庫県知事選では、真偽不明の主張がインターネットを通じて拡散し、選挙結果に大きな影響を与えたと指摘された。まさにカオスとしか表現しようのない状況であり、安倍政権下でネトウヨとネトサヨが激しく対立していたほうがまともだったように思えてくる。

「石丸氏に関しては、都知事選前に彼の功績を伝えるショート動画を見ているサラリーマンを電車内で見かけており、『こうやって応援する人が生まれるのかもな』という感触はありました。私自身はショートでもロングでもあまり動画を見ないのですが、見ている人は見ているのだなと。兵庫県知事選には特別の関心を持っていませんでしたが、地元の事情を知る人から『役所内でも評価は半々』と聞いてはいました」

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