実は“女性読者”が支えていた「WiLL」「Hanada」の知られざる実態…安倍元総理の死去、ネット“陰謀論”時代の到来で“右翼雑誌”に活路はあるか

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疲弊、入院、退社

 花田氏に恩義を感じ、またこの状況下で読者への責任を放棄できないと考えた梶原氏は退職することを“一時延期”し、「Hanada」に移籍することを選んだ。

 分裂騒動の余波は大きく、体力的にも辛い日々が続いた上、2017年2月には森友学園問題が勃発した。梶原氏がどのような形で騒動に巻き込まれたかは著書に詳述されているため割愛するが、左派も右派も肝心の事実関係を後回しにしたかのような一方的な批判と擁護ばかりが目につき、梶原氏は心の底から疲弊してしまう。

《筆者の立場はあくまで編集者であり、自ら裏取りに赴くようなことは極めて稀だ。そのため、こうした事件の事実関係を分析するにも、基本的には寄稿者が書いてきたものを信頼するしかない。しかし、あまりに情報が錯綜し、どれが「冷静客観的に事実関係を洗って分析したもの」で、どれが「ためにするもの」なのかが入り乱れた状況下で、筆者はかなりの混乱状態に陥っていた》

《結局筆者は、2018年9月の安倍総理の3選直前、体調を崩して入院。「安倍3選」の報は、入院先のベッドで隣の患者が流していたラジオのニュースで知った。そしてそのまま半年間休職し、2019年3月に正式に編集部を去ることになった》

実は多い女性読者

 梶原氏が新書を上梓したのは、全く面識のない星海社新書の編集者から依頼を受けたからだという。

「『保守雑誌の作り方、ビジネスモデル、なぜ人は保守雑誌にひかれるのか』といった本を、と言われて、正直に言いますと、内心では『そんな本、誰が読むんだろう』と首を傾げていました(笑)。ただ打ち合わせの後、構成については比較的、早くまとめることができて、目次案もスムースに完成しました。せっかく新書を出すからには『WiLL』や『Hanada』に対する的外れな批判が飛ぶ状況を正したいという強い想いもありました。批判するならちゃんとやってもらわないと、意味がないからです。その中の1つに雑誌の読者像という問題があり、これは第5章『読者との壮大な井戸端会議』で詳述しています」

 韓国や中国に厳しい視線を向ける「WiLL」や「Hanada」は、ヘイト的な言説を好む男性読者が中心であり、偏見に凝り固まった高齢者が多い──こう指摘する識者は、今でも決して珍しくない。だが梶原氏が編集部で体験したこととは、かなり違う。

「ある本に『書店で「WiLL」を買う女性客を見たことがない』と述べる書店員のコメントが掲載されていました。ところが『WiLL』の媒体資料を作る際、書店で調査を実施してみると、読者の3割から4割が女性という結果になったのです。実際、夫の名前で定期購読を申し込んでいるが夫婦で読んでいるとか、確かに書店で買っているのは夫でも、家で妻も読んでいるというケースは珍しくありませんでした。花田さんは女性誌『uno!』の編集長を務めた経験を持っていますし、『週刊文春』も伝統的に女性読者が多いことで有名です。花田さんの作る雑誌を追いかけて『WiLL』や『Hanada』にたどり着いた女性読者も少なくないのです」

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