実は“女性読者”が支えていた「WiLL」「Hanada」の知られざる実態…安倍元総理の死去、ネット“陰謀論”時代の到来で“右翼雑誌”に活路はあるか

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“ゲリラ隊員”の大きな衝撃

「ところが、そうした一致を喜んでいるだけでは済まない状況になってきました。新人の時、花田編集長から『編集者はいいぞ。名刺一枚で誰にでも会える』と言われましたが、その言葉は本当だと思います。編集者やライターという仕事には昔も今も強いやりがいを感じています。その一方で、『WiLL』編集部で働くこと対して、最初に“引っかかり”を覚えたのは、大学生の頃から愛読していた保守系の月刊誌『諸君!』が2009年5月、6月号を最後に休刊してしまったことが理由でした」

 なぜ梶原氏は「諸君!」の休刊に衝撃を受けたのか、新書から該当部分を引用させていただく。梶原氏は“保守系のオピニオン雑誌”において、「諸君!」と「正論」が二枚看板であり、「WiLL」は“ゲリラ雑誌”と位置づけていたという。

《正規軍がしっかり戦って本拠地を守っているからゲリラ部隊も戦いようがあるのであって、本拠地が壊滅したら「保守陣営」「保守戦線」は崩壊することになる。新興雑誌がゲリラ戦的な戦いで許されるのは、正規軍としての『諸君!』『正論』があればこそで、だからこその戦い方でもあり、存在しうる形態でもあった》

《その正規軍の一角である『諸君!』が休刊するという。その衝撃は、ゲリラ部隊の隊員としてはかなり大きなものだった》

保守・右派に対する最初の疑問

 梶原氏が入社して約7年後、2012年12月に安倍晋三氏が首相の座に返り咲き、第2次安倍政権が発足した。梶原氏は安倍氏が『第一次政権は挫折したが、今回はどこまでやってくれるだろうか』と期待する気持ちは持っていた。だが、政権の発足早々、梶原氏は疑問を感じてしまう。

「2012年12月の総選挙で、旧民主党から自民党の政権交代が実現しました。選挙前、野党だった自民党は『竹島を日本に編入した日にあたる2013年2月22日に政府主催の式典を開く』ことを公約の一つにしていました。ところが安倍さんが首相に就任すると、『早々の開催は見送る』と新聞社などが報じました。まあすぐにはできないかもしれないと思いつつも、やはりなかなか実現しない。その後、『WiLL』の編集部員として竹島問題の特集記事や、増刊号の編集に関わる中で、島根県を取材したこともあり、様々な関係者からお話を伺いました。そして皆さんが、どれだけ真摯な想いで活動を積み重ねてきたのか感銘を受けて『現場の人たちは必死なのに、なぜ式典を政府主催にしないのか』という思いも強まっていきました」

 左派陣営が無視するのは分かる。だが、保守・右派陣営が安倍氏に“諫言”せずに誰が言う──梶原氏は、そう考えた。

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