“右翼雑誌”と呼ばれても「WiLL」「Hanada」が絶大な支持を集めた理由…元編集部員が明かす「他の月刊誌ではありえない」名物編集長の仕事術

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月刊誌ではあり得ない“スピード感”

 梶原氏は新人の編集部員として、いきなり“右肩上がり”の部数増を続けている編集部に勤務することになった。非常に珍しいケースであることは言うまでもない。

「WiLL」は創刊から数年で部数は10万部を超え、雑誌では異例の重版が何度かかかった。2010年代には日本を代表する名門月刊誌である「文藝春秋」の背中が見えるようになり、花田氏は「瞬間風速なら抜けるかもしれない」と口にしたという。

 梶原氏の著作でも紹介されているが、「WiLL」が躍進を遂げた理由の一つにタイトルがある。花田氏のタイトルは「週刊文春」の編集長時代から話題だったが、「WiLL」でも《ヤクザも呆れる中国の厚顔無恥》、《気色悪い温家宝の笑顔》、《朝日を読むとバカになる》──と読者の耳目を確実に惹くタイトルが多かった。

 だが、いくらタイトルがキャッチーでも、それだけで部数が伸びるはずもない。「WiLL」が読者の支持を得たのはスピード感。つまり「週刊誌の進行で月刊誌を作る」ところが大きかったという。

《雑誌(特に月刊誌)は特集が決まり、ラインナップとページ数が決まり、台割ができてから動き出すものだという。「という」というのは、『WiLL』や『Hanada』では「校了直前に台割が決まる」ものだったので、他誌が事前に特集も掲載記事もページ数さえも決まった状態で寄稿依頼や取材が始まると聞いたのは、この業界に入ってしばらく経ってからのことであった》

繰り返される「終電帰り」の日々

《どの雑誌でも、突発的に重大な事件や出来事が起きた場合には記事の差し替えや特集の組み替えが行われると思うが、『WiLL』や『Hanada』の場合は、それが平常運転なのである。要するに「もっと面白い記事があったら当初の予定など無視してそちらを載せる」「ページが足りなくなれば一部記事は翌月(以降)に繰り越す」のである》

 梶原氏は《安倍総理と聞き手の対談を某日夕方に実施し、次の日の朝に著者チェックを経て昼に校了する》という強行軍を担当したことがあったという。

 校了直前に新しい記事をねじ込むためには、尋常ではないスピードで脱稿する必要があるし、さらに前から準備していた別の記事を“圧縮”しなければページを確保できないこともあった。

 2016年3月までの「WiLL」は花田編集長以下、編集部員は3~4人。花田氏が飛鳥新社に移籍し、同年4月に立ち上げた『Hanada』の編集部でも部員は4人。これだけの人数で殺人的スケジュールに振り回されながら通常号を制作し、さらに増刊号や関連書籍も編集する。

《作業量は膨大なものとなる。以前は1週間から10日前後の終電帰りと最終日の徹夜作業を繰り返していた。2024年現在、花田編集長は82歳となり、さすがに徹夜・始発帰りはしなくなったものの、それでもほぼ毎月、数日間の終電帰りと校了最終日の午前様帰りを繰り返している》

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