TBS報道特番で異例の抜擢 オリラジ中田は「テレビ」と「ネット」を渡り歩く象徴的な存在に

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政治関連の動画が増加

 一見すると、中田は緻密な戦略を立てて理屈で動く人間のような雰囲気があるが、実際には人一倍感覚的なところもある。最近、政治関連の動画が増えていたのも、戦略によるものではなく、単に個人的にもそこに興味が向いたからだった。世の中でも人々の政治への関心が高まっている時期だったため、中田のYouTubeチャンネルはますます人気を博すようになった。

 中田のYouTubeでの活動に対しては根強い批判の声もある。専門的な知識や解釈に間違いがあると指摘されたり、政治的な話題で特定の勢力からの一方的な主張を垂れ流しているのではないかと言われたりしている。そういう人間はテレビの報道番組のMCにはふさわしくない、という意見もネット上ではよく見かけた。

 ただ、「報道の日2024」の公式サイトで公開されている総合プロデューサーのコメントによると、オールドメディアとニューメディアの立ち位置が逆転した今だからこそ、メディアのあり様について考えるために、ニューメディアのYouTubeで活動している中田をMCとして起用したのだという。

「中田のようなやつをテレビに出すな」という主張には一理あるのかもしれないが、そういう単純なレッテル貼りが、もはや通用しないほどメディア同士の力関係が激変している、というのが制作者側の認識なのだ。

 中田の起用について、放送前は批判的な声も含めて話題になっていたが、正直なところ、放送後の反応はそこまで大きくなかった。SNSでもネットニュースでもほとんど話題になっていない。

 良くも悪くも、中田はもともと売れっ子の芸人であり、テレビの仕事にも慣れている。不用意な発言をして炎上するようなこともなく、無難に終わったということなのだろう。

 この結果はオールドメディアの勝利なのか、敗北なのか。中田はテレビに抑え込まれたのか、テレビを乗り越えたのか。テレビとネットを渡り歩く中田は、この激動のメディア戦争時代を象徴する存在である。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

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