時代はネット広告よりも「消火栓広告」? 街なかでお馴染みの“赤い標識”が有名「Jリーグチーム」から熱い視線を集める理由
営業先へのサプライズにも
改めて消火栓標識を見上げてみると、美容室や歯科クリニック、不動産屋にパチンコ店など、地元密着型の企業や店舗の広告が入っているのが分かる。人通りの多い道路から店まで誘導するという意味で、たしかに有効な広告かもしれない。
ちなみにこのスペースは、掲示する内容の審査さえ通れば誰でも広告が出せるという。同社の営業担当者が興味深い“裏技”を教えてくれた。
「たとえば、営業マンの方がどうしても契約を取りたい取引先があったとします。その際、先方の会社近くにある居酒屋で接待をする。そして、店を出たところに立っている消火栓標識に先方の会社名が入った広告を出しておく。すると、店を出た際に“社長、こちらの標識をご覧ください!”なんてサプライズも可能なんです」
もちろん、テレビCMやネット広告、大型ビジョンを使った広告と比べれば、その効果は限定的だろう。ただ、路上に堂々と掲示できる公共広告媒体は限られており、それこそ店舗の目の前に広告を出すことも可能。気になるのは料金だが……。
「標識の設置場所や地域などの条件によって料金は異なりますが、都内でも看板製作費、掲出にかかる費用など、全て合わせても月間1万円程度。関東周辺の地方都市なら月間数千円程度で広告看板を設置可能です」(営業担当者)
スポーツチームが関心を示す理由
さらに、消火栓標識広告とその他の広告媒体との違いが、「出せば感謝される広告」という点だそう。
「たとえば、繁華街や首都高沿いのビルの壁面にデカデカとした企業広告を出しても、多くの人は“会社の宣伝に高いお金を払って景気がいいことで”と感じるだけでしょう。一方、消火栓標識広告は実際に“地域の防災”に役立っているので、広告を出すと地域の人たちから“広告を出してくれて、ありがとう”と言ってもらえるんですね」(同)
この「地域貢献」という点に目を付けたのが、地元密着型のプロスポーツチームだった。すでにJリーグのモンテディオ山形、JFLのクリアソン新宿などが、地元のスポンサー企業とタイアップして消火栓標識への広告掲出に乗り出したという。また、昨年11月には東京ヴェルディが、先の消火栓標識株式会社とオフィシャルパートナー契約を締結したと発表している。
スポーツチームとスポンサー企業をつなぐ『FUTURE SPORTS株式会社』の代表取締役・岡田猛志氏が言う。
「地域防災への取り組みに加え、各チームの特色や地域性を活かした企画も立ち上がっています。選手が標識広告の設置に立ち会ったり、ファンのSNS投稿イベントや学生インターンを巻き込んだ企画など新たな掛け算を模索しています。また、プロ野球の球団を含め、すでに多数の問い合わせを受けており、これからさらにスポーツチームの消火栓標識広告が増えていく予定です」
見慣れた「赤い標識」への見方が少し変わるかも。