元トランプ側近のジョン・ボルトン独占インタビュー トランプ2.0が日本に与える影響とは
日本への助言
NATOのような多国間同盟であれ、日本や韓国とのような二国間防衛協定であれ、トランプ氏は集団防衛の枠組みや二国間の防衛協定がどのように機能するのか、深い理解を欠いています。彼はアメリカが日本を一方的に守っていると考え、その見返りに何も得られていないと主張しています。また、日本政府が同盟の経済的負担を十分に負わないにもかかわらず、なぜアメリカが同盟を維持する必要があるのかを疑問視しています。
日米同盟が70年にわたって続いているのは、両国に利益があるからこそです。トランプ氏は、日本が日米同盟によって自国の安全保障を維持しており、また、アメリカも日本の基地提供と米軍の地位の保証によって安全を保っていることを理解していません。ですので、米軍駐留経費の増額を要求したり米軍撤退の圧力をかけたりするだけでなく、トランプ氏は日米同盟が不公平であるとし、自衛隊も米国を守る義務を負うべきだという主張を繰り広げる可能性があります。これに対し、日本政府は真剣に準備を進める必要があるでしょう。
トランプ氏がもたらす不安定性により、日本や韓国から核武装の必要性を訴える声が高まる可能性があります。ただ、これは北東アジアをさらに複雑で危険な状況に追い込むことになり、理想的な選択肢ではありません。
明確な哲学や一貫した戦略が欠けている
北東アジアには北朝鮮問題があり、トランプ氏が金正恩総書記と再び会談するのは、ほぼ確実といえるでしょう。唯一の問題は、会談の場所です。私の予測では、平壌で金正恩氏と会うことを望むはずです。これまでシンガポール、ハノイ、3度目の会談は朝鮮半島の非武装地帯で実施されました。それを超えるインパクトを持つ会談場所となると、平壌以外に考えられません。しかし、非核化を達成するという点に関して、トランプ氏には具体的な計画が全くないと考えます。
北朝鮮も本気で交渉に応じるとは思えません。トランプ第1次政権中、北朝鮮は「米朝枠組み合意」のように、非核化の約束を先にし、その見返りに経済的利益を手に入れるという交渉をしました。これは今回も十分に再現可能だとは思います。
こうした中で私が日本にアドバイスできることは、指導者がトランプ氏と良好な関係を築き、常に連携を図ることです。特に推進する政策がトランプ氏個人の利益につながることを強調し、協力関係を強化することが重要です。このような努力をした安倍晋三元首相はトランプ第1次政権時代、他の誰よりも親密な関係を築きました。
トランプ氏には明確な哲学や一貫した戦略が欠けています。
私は、彼の登場はアメリカ政治史における一種の奇妙な現象に過ぎないと評価しています。このため4年の任期が終わってもしばらくはその影響が残ると思いますが、それは共和党内も含め、長続きしないでしょう。幸いなことに、トランプ氏が表舞台から退いたあと、彼のような、あるいは彼をまねできる人物は現れないと思います。その意味で、アメリカや世界が後処理に苦しむほどの大ダメージは避けられると考えています。
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