元トランプ側近のジョン・ボルトン独占インタビュー トランプ2.0が日本に与える影響とは
ロシアを利する停戦
ウクライナ戦争については、トランプ氏は戦争をどう終結させるべきか、具体的な計画を全く持っていないと思います。ゼレンスキー大統領とプーチン大統領を同じ部屋に集め、24時間以内に合意を結ばせると言っていますが、これは極めて非現実的な提案です。ちなみに、トランプ氏はウクライナの特別交渉人にキース・ケロッグ元米陸軍中将を指名しました。彼は非常に反NATO的な人物として知られています。
ロシアは米主導の停戦交渉に応じるかもしれませんが、おそらく現在の支配線に沿って紛争を凍結し、新たな国境線を引くことを望んでいるでしょう。これはウクライナにとって最悪の事態となります。もしトランプ氏の思惑通り、今すぐ停戦宣言をさせて交渉を開始すれば、事実上ロシアの勝利になります。それはプーチン氏の正当性を証明することにもつながります。
私が特に懸念しているのは、次期副大統領J・D・ヴァンス氏が提案している、朝鮮半島の分割統治に似た非武装地帯をウクライナの停戦ラインに沿って設けるアイデアです。これはウクライナに適用できるモデルではありません。仮に、国連平和維持軍や欧州軍が停戦ラインに沿って軍隊を配置すれば、それは停戦ラインを実際の国境として定着させる危険を孕んでいます。そうなれば、ウクライナが将来、奪われた領土を外交的に取り戻すことは格段に難しくなるでしょう。
本来であれば、アメリカは3年前に長距離ミサイルやその他の戦略兵器をウクライナに供給し、兵器の使用に関する制限を解除すべきでした。
真の危機が生じる
アメリカの決意が弱まれば、ヨーロッパの決意も同様に揺らぎ始めます。ウクライナにとって極めて危険な状況を招くことになり、プーチン氏は間違いなくその機会を最大限に活用するでしょう。私であれば、ウクライナが交渉を有利に進めるための立場を確保するまで、プーチン氏とは一切の交渉を行わないでしょう。
今後、世界はアメリカがNATOから撤退する、あるいは欧州における軍事的プレゼンスを大幅に低下させるという脅威に直面することでしょう。トランプ氏は、NATOの加盟国が応分の負担をしなければ同盟から脱退すると言っていますが、彼はこのレトリックを過去10年間繰り返してきました。すでに多くのNATO諸国が国防費を増加させています。今後はさらに増やさなければならない可能性が高まっています。
日本の岸田文雄前首相も、在任中に防衛予算を5年間でGDPの1%から2%に倍増させると約束しました。実質的には円換算で2倍以上の増加になりますが、石破政権ではさらなる増額を迫られることになるでしょう。したがって「2%さえ達成すれば大丈夫だ」という考え方は的外れです。特にウクライナの緊迫した状況を背景に、NATOの安定とアメリカのヨーロッパへの関与を巡る真の危機がトランプ第2次政権で生じると考えます。
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