元トランプ側近のジョン・ボルトン独占インタビュー トランプ2.0が日本に与える影響とは
健全な政権運営の障害に
私はトランプ第1次政権で最も長く安全保障補佐官を務めた経験から、初期内閣に選ばれた人々の実績が芳しくなかったことを知っています。ご存じの通り、多くは非常に短命な任期でした。先日、トランプ氏側近の、ある友人と話をしました。彼は「トランプ2.0」で高職を狙っていましたが、その願いはかなわなかったそうです。それでも「大丈夫」と安心していました。どうせまた多くのポストが入れ替わるだろうとみているからです。人事が何度も変更される状況は、健全な政権運営や質の高い意思決定にとって大きな障害となることは明らかです。
ただ、第2次政権で対中政策を担当するであろう人物たちは、おおむね正しい方向を向いていると思います。
中国は、インド太平洋地域やその周辺、さらには世界規模で、経済的、政治的、軍事的にさまざまな脅威的行動を起こしています。そのため、今後はバイデン政権よりはるかに厳しい姿勢を取る必要があります。ジョー・バイデン氏は中国との気候変動に関する交渉を優先したため、それほど強硬な対応を見せることはありませんでした。しかし気候変動は中国にとって優先課題でもなく、中国がもたらす最大の脅威でもありません。現実的な対応を取るためには、より包括的かつ厳格な政策が求められます。
威嚇的なレトリック
その一方、米中貿易戦争には慎重であるべきです。
これまでの発言を見ても、トランプ氏は中国だけでなく、場合によってはすべての貿易相手国に対して不当に高い関税を課そうとしています。時には隣国のカナダやメキシコ、あるいは同盟国にでさえ威嚇的なレトリックを繰り返しています。トランプ氏は関税を非常に好み、「辞書の中で最も美しい言葉」とさえ言っています。大規模な関税を課すことで莫大な歳入が得られ、アメリカに雇用が戻ると信じているのでしょう。
トランプ氏が理解していないのは、輸入品に関税がかけられると、最終的にそのコストを負担するのはアメリカの消費者であるという点です。さらに、関税を課された国々から全面的な報復を受けるリスクもあり、貿易全体が不安定化する可能性があります。こうした負の影響をまったく考慮していないのです。
もっともトランプ氏のことなので、アメリカの対中政策が実際にどう進展するかは予測できません。今のところ、トランプ氏は中国に対して強い不信感を抱いているといえます。特に、武漢から発生したコロナ・パンデミックと、それがアメリカにもたらした経済的後退が大きな悪印象を与えたはずです。おそらく、そのために2020年の選挙で敗北したと考えているでしょう。とはいえ、もし習近平国家主席が史上最大の貿易協定を結ぶようトランプ氏を説得すれば、それに魅了され、応じる可能性も十分あります。
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