中居正広問題「フジテレビにとって被害女性はもう他人なのか?」社長会見で元テレビ朝日法務部長が気づいた「3つの違和感」と「中居との相似点」

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

「共通の三文字」から見えること

 同社は事件への関与を報じられた幹部についても、ホームページ上で「当該社員は会の設定を含め一切関与しておりません」と報道を全面否定する声明を出した。弁護士らによる調査が継続中の段階なのに早くも幹部の関与を全面否定するコメントを出した同局の姿勢は、中居氏と同じく「目の前にいる仲間うちを優先する」ものに思える。

 そして中居氏とフジテレビの共通点の3つ目。それはどちらのコメントにもこの3文字が登場する点だ。

「つもり」

 中居氏は、被害女性と示談が成立し事件は解決しているとした上で、こうコメントした。

「解決に至っては、相手さまのご提案に対して真摯に向き合い、対応してきたつもりです」

 フジテレビ社長は、被害女性への対応について、冒頭発言でこう述べた。

「私としては、随時、報告を受けながら、とにかく心身の安全を最優先する方針で対応してきたつもりでありました」

「つもり」という3文字は、謝罪や危機管理の場で使ってはいけない言葉の典型とされている。この言葉は「こっちは一生懸命やったつもりなのに」という自己主張や、「これでも不足なのか」という「逆ギレ」に見えかねないからだ。

 中居氏の問題では、女性は今も事件の痛みを忘れておらず、フジテレビへの不信感も大きいと伝えられている。それなのに「自分たちはちゃんと対応した『つもり』だ」と公に発信することが相手女性にどう響くか。そうした視野が、中居氏にもフジテレビ側にも欠けてはいないか。 こうしたフジテレビと中居氏のコメントの共通点は、両者の「ものの考え方」の近さを浮かび上がらせる。

フジテレビは中居氏との関係を継続するつもりだったのではないか

 そしてそのことが、私がずっと気になっている「ある事実」の背景にあるように思う。それは「フジテレビは事件を知った後も、中居正広氏を重用し続けた」という事実だ。

 今回の会見でフジテレビ側は、発生直後から事件を把握していたことを明かした。それにもかかわらず中居氏の番組を続けた理由について社長はこう説明している。

「中居氏が出演している番組『だれかtoなかい』については、唐突に終了することで憶測が生じることを懸念して、慎重に終了のタイミングをはかっておりました」

 だが本当に同社は「終了のタイミング」をはかっていたのか。この番組はもとは松本人志氏と中居氏が共演する『まつもtoなかい』だったが、事件の翌年の2024年1月、松本氏が性加害報道に対する裁判に専念するため活動を休止した。

 番組の二本柱の一方が休業したこの時こそ番組終了のタイミングだったはずだが、翌2月には中居氏を中心にして『だれかtoなかい』へと番組をリニューアル。さらに同年7月には、同社は中居氏をパリ五輪特番に起用している。

 この時系列を見ると、次のような推測が頭に浮かぶ。フジテレビには中居氏との関係を「終了」するつもりなどなかったのではないか。なぜならフジテレビ上層部も中居氏も「仲間うち」を重視し、被害女性を最優先とは考えていなかったから。

 フジテレビ社長会見と中居氏コメントが不思議に似ている。そのことは、この問題の根深さを物語っているように感じている。

【関連記事】「不遜な性格、宅飲み好き…テレビ関係者が明かす「中居正広」本当の評判、強気コメントの裏側」では、中居の知られざる裏の顔について詳報している。

西脇亨輔(にしわき・きょうすけ)
1970年10月5日、千葉・八千代市生まれ。東京大法学部在学中の92年に司法試験合格。司法修習を終えた後、95年4月にアナウンサーとしてテレビ朝日に入社。『ニュースステーション』『やじうま』『ワイドスクランブル』などの番組を担当した後、2007年に法務部へ異動。弁護士登録をし、社内問題解決などを担当。社外の刑事事件も担当し、詐欺罪、強制わいせつ罪、覚せい剤取締法違反の事件で弁護した被告を無罪に導いている。23年3月、国際政治学者の三浦瑠麗氏を提訴した名誉毀損裁判で勝訴確定。6月、『孤闘 三浦瑠麗裁判1345日』(幻冬舎刊)を上梓。7月、法務部長に昇進するも「木原事件」の取材を進めることも踏まえ、11月にテレビ朝日を自主退職。同月、西脇亨輔法律事務所を設立。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。