「石井&三木体制」再来で揺れる楽天…田中将大“放出”など物議を醸す人事は「過去の投資」の“ツケ”との見方も
昨年から5人の監督が入れ替わったプロ野球。なかでも、ファンの驚きが大きかったのは、今江敏晃監督が1年で退任した楽天ではないだろうか。昨季は、67勝72敗4分、借金5。この成績は、決して褒められたものではないが、順位は前年と同じ4位。セ・パ交流戦では球団史上初となる優勝を飾っていた。【西尾典文/野球ライター】
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田中将大の“放出”も批判された楽天首脳陣
「オフに目立った補強をしていたわけではなく、前評判も決して高くありませんでした。その中で前年と同じ4位という結果は、ある意味で想定通りとも言えます。采配や選手とのコミュニケーションの部分で問題はあったかもしれませんが、交流戦の優勝は評価されてしかるべきではないでしょうか。そもそも今江監督は2年契約の1年目であり、推定年俸はプロ野球の監督として、かなり安い4000万円。こうした点を考えても、同情する声は多いです」(在京スポーツ紙記者)
かつて同じように楽天の監督を1年で退任となった田尾安志氏、大久保博元氏も自身のYouTube番組で、今江監督の解任を疑問視する意見を発信している。他にも同様の感想を持っている球界OB、関係者が多いのは想像に難くない。
また。このオフには、2013年のリーグ優勝、日本一の立役者である田中将大を自由契約としたことについても、球界関係者から批判の声が出ていた。
昨年11月、2020年に監督を務めた三木肇・二軍監督が再び一軍の指揮を執ることが明らかになった。加えて、年が明けた1月6日。楽天は“物議を醸す人事”を発表する。昨年までシニアディレクター(SD)の職にあった石井一久氏が、ゼネラルマネージャー(GM)に復帰することが発表されたのだ。
石井氏は2018年9月にGMに就任。2021年からの2年間はGM兼監督を務め、2023年シーズンは監督に専念していた。GM復帰は3年ぶりとなるが、直前までは監督を務めており、この短期間で再び現場を統括する立場に戻るというのは異例のことである。
このタイミングでの石井氏“再登板”の理由とは
なぜ、石井氏が再びGMに戻ったのだろうか。楽天の元編成担当者に聞くと、以下のように解説してくれた。
「大きいのは、石井さんの性格ではないでしょうかね。私が球団にいた時は定期的にオーナーへの報告があったのですが、三木谷オーナーは時には『こういうデータはとれないのか?』という手書きのメモを渡してくることもありました。野球の専門家から言わせると、『意味があるのか』と疑問を感じるものですが、もちろん、オーナーを無視することはできませんので、メンバーを動かして対応する必要があります。それで成果が出れば良いのですが、そういうわけでもない。そんなことが続くと、どうしても現場は疲弊してきますよね。石井さんはオーナーの要求を上手く受け流すことができて、ある程度、目に見える策を打つのが上手だと思います。ヤクルト、西武だけでなくメジャーに在籍した経験があり、人脈を持っていますから。楽天としても、石井さん以外に頼れる人がいないという状況なのではないでしょうか」
実際、前回GMを務めた期間にはフリー・エージェント(FA)で浅村栄斗、鈴木大地といった他球団の主力選手を獲得し、多くのトレードを成立させている。実績のある選手を獲得して、戦力を整えるという側面では、手腕を発揮したと言えるだろう。
チーム成績を見ても日本一に輝いた翌年からの5年間でAクラスは3位が1回で、最下位が3回、5位が2回と低迷していたところから、石井氏がGMおよび監督を務めた5年間は、3位が2回、4位が3回と改善している。
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