高校野球「7イニング制導入」なら“公立の星”は有利に!? 過去の試合を分析すると見えてくる“負の側面”とは
“高野連好みのチーム”が有利になる感は否めない
そして、選抜の「21世紀枠校」にも、8回以降の“壁”に泣いたチームが存在する。2007年の都留は、強豪・今治西を相手に、エース・小林久貴が7回まで被安打3の1失点と好投。2対1とリードしたが、8回にエラーと連打で満塁のピンチを招くと、痛恨の逆転2点タイムリーを浴び、力尽きた。
2014年の海南は、6回まで池田を1対0とリード。7回に3安打を集中して3対0と突き放したかに見えた。だが、8回に集中打で2点を返され、9回にも内野のエラーで無死満塁とピンチを広げると、逆転サヨナラ2点タイムリーを許し、勝利目前から一転初戦敗退となった。
2019年の石岡一も、エース・岩本大地が甲子園の常連・盛岡大付を7回まで2安打無失点と好投。1対0の9回にも3連打で貴重な1点を加えたが、勝利まであと1人となった9回2死一塁から連続長短打で同点。延長11回にエラーで2対3とサヨナラ負けした。
このほかにも、2021年の具志川商(福岡大大濠戦)や昨年の田辺(星稜戦)のように7回終了時点で同点だったのに、8回以降に勝ち越し点を奪われて敗れたチームもあり、野球は8、9回をどう戦うかで勝負が決まる例がいかに多いかを改めて痛感させられる。
7イニング制になることで、21世紀枠校や“公立の星”といった“高野連好みのチーム”が有利になる感は否めないし、過去の選抜で2度達成された完全試合も、9人がアウト3つずつの打者27人から打者21人と中途半端になり、参考記録と変わりはない。
高野連では、今年12月までに7イニング制について対応策をまとめるとしているが、野球が異なるスポーツに変質してしまう可能性もある新制度を、たった1年で結論を出すのは早計と言わざるを得ない。継続審議になってもいいから、現場の指導者、球児たちの意向も十分に汲みながら、誰もが納得のいく対応を切に望みたい。
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