「専門家からすると“自殺行為”」 事故多発の再生医療の闇… 「儲け優先の医師が売りまくっている」

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“自殺行為”

 出どころ不明の不気味な液体を肌に塗りたくる――。考えただけでもゾッとするが、さらに危険なのは、その液体を静脈に注射するという施術メニューが存在することだ。“静脈注射”をすれば上清液やエクソソームの有効成分が効果的に全身を回り、さまざまな疾患に対しより高い効果を発揮する。そんな売り文句らしいが、専門家からすれば、いつ命を落としてもおかしくない“自殺行為”に他ならないという。

 実際、再生医療安全推進機構の「再生医療相談室」には、日々、切実な“悲鳴”が寄せられている。

 香月氏が言う。

「向精神薬の影響で勃起不全になった男性がクリニックで陰茎にエクソソームの局所注射を行ったところ、数日後から、椅子に座ることもできないような強い痛みや手足の痺れが現れたそうです。クリニックに相談しても“メンタルの問題”と門前払いされたといいます。また、脳梗塞の治療にと病院からエクソソームの点滴を勧められた方もおられました。全10回の点滴治療に合計400万円ほど支払ったものの、9回目の点滴を終えた段階で効果は全くなし。医師に説明を求めてもはぐらかされるばかりだったそうです」

意識レベルが下がり救急搬送

 都内で再生医療クリニックを経営するある医師も、こう証言する。

「上清液やエクソソームを美容液として皮膚に塗布することは、健康被害という意味ではほとんどリスクはなく、むしろ効果的な側面も確認されています。でも、それはあくまでも美容液が真皮より深くには浸透しないことが前提。上清液やエクソソームに不純物が混じっている場合、それを静脈に注射してしまえば不純物が全身を回り、最悪の場合、命を落とすことにもなりかねません。私の知っている医師も業者からエクソソームの静脈注射を病院の施術メニューとして提案され、試しに自分の腕の血管に注射したところ、たちどころに意識レベルが低下。最終的に救急搬送されるに至ったということがありました」

 それでも“静脈注射”という危険行為が横行しているのは、ひとえに医師の無知が原因といい、

「“あたかも再生医療”を提供する医師の中には、再生医療の専門家ではない先生もかなりいます。彼らが上清液やエクソソームに手を出すのは、悪質な細胞販売業者に“儲かりますから”と勧められたというだけ。上清液やエクソソームは機械さえ用意できれば誰でも作り出すことができ、そのための資格も不要ですから、最近は“ベンチャー感覚”で細胞培養事業に乗り出す実業家も多い。そのような駆け出しの業者が“エクソソームをやりませんか”と専門外の医師に売り込みをかけるのです」(同)

 これまでプラスの面ばかりに光が当てられてきた再生医療の世界。研究が進んで“不治の病”がなくなるのなら喜ばしい限りだが、“不老長寿”のうたい文句にはまだまだ落とし穴が潜んでいることを肝に銘じておくべきだろう。

週刊新潮 2025年1月16日号掲載

特集「トラブル多発で国が“停止命令”も 美容医療業界で大人気 「再生医療」の落とし穴」より

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