「専門家からすると“自殺行為”」 事故多発の再生医療の闇… 「儲け優先の医師が売りまくっている」
“儲け優先”で売りまくり
法律内で提供される再生医療ですら安全性に疑問符が付くのだから、法律外で提供される“あたかも再生医療”の安全性は推して知るべし……。ところが目下の再生医療業界では、この“あたかも再生医療”が絶大な人気を博しているのだという。
香月氏が嘆息する。
「この手の“再生医療”の代表格が、エクソソーム治療や幹細胞培養上清液(じょうせいえき)治療と呼ばれる治療法です。これらは培養した幹細胞を直接使用するのではなく、培養後に残った上清液という上澄み液や、細胞から分泌されたエクソソームと呼ばれる物質を抽出し、皮膚に塗布したり筋肉に注射したりすることで治療効果を得ようとするもの。細胞を体内に注入するわけではありませんから安確法の所管外であり、面倒な提供計画の作成や委員会への審議の申請なども要りません。細胞を培養した後のいわば“廃棄物”を利用するわけですから価格も数万円程度で、法律内で提供される再生医療とは比べ物にならないくらい安い。しかも『手軽だ』と人気がありますから、効果もリスクも理解していない医師が“儲け優先”で売りまくっているのです」
命の危険にさらされる恐れも
実際、上清液やエクソソームをインターネットで検索すると、アンチエイジングや傷ついた組織の修復、育毛、疲労回復に免疫調節作用など、夢のような効果がうたわれている。中には「iPS細胞を利用」といった最先端医療を装う宣伝文句まで存在する始末だ。
しかし現実には「夢のような治療」とは程遠い劣悪な製品が横行し、命の危険にさらされる恐れすら否定できないのが実態なのだという。
「“あたかも再生医療”のリスクの一つは、製品の原料がどこの誰の細胞か分からないというところです。法律の範囲内の再生医療では基本的に、使用されるのは自分の細胞です。ところが、私たちが調査したところ、現在の日本で表立って上清液治療やエクソソーム治療を提供している約700カ所の医療施設のうち、患者自身の細胞を使用していると明確に公表している施設はほとんどありません。それどころか8割以上が他人の細胞由来か、下手をすれば人間の細胞由来ではない恐れすらあります。また、専門家の調査によって、エクソソームとうたいながらエクソソームが全く含まれていない“謎の液体”が使用されている悪質な例も判明したため、注意が必要なのです」(香月氏)
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