「専門家からすると“自殺行為”」 事故多発の再生医療の闇… 「儲け優先の医師が売りまくっている」
“あたかも再生医療”
玉石混淆の再生医療業界において、そもそも「再生医療」という言葉自体が曖昧模糊(もこ)としていると指摘するのは、一般社団法人「再生医療安全推進機構」の代表理事を務める香月信滋氏だ。
「皆さんがイメージされている通り、再生医療とは病気やケガなどで損なわれた細胞や組織、器官を正常な状態に“再生”させる治療法を言います。ただ、現在一般的に提供されている再生医療には、法律内で提供される再生医療と法律外で提供される“あたかも再生医療”の二種類が存在するのです」(香月氏)
ここでいう「法律」とは、13年に成立、翌14年に施行された「再生医療等安全性確保法(安確法)」のことを指す。再生医療では多くの場合、患者の体内から細胞を採取し、それを培養したり加工したりしたものを再び患者の体内に戻すことで治療が行われる。安確法ではそのような再生医療を行うにあたって踏むべき厳格なプロセスが定められているのである。
「具体的には、医療機関は再生医療等の提供にあたって各疾患の治療法ごとに『再生医療等提供計画』を作成することが義務付けられます。そして、その提供計画は安確法に基づいて厚生労働省から設置認定を受けた『特定認定再生医療等委員会』の審議にかけられる。そこで承認された後、厚生労働大臣に届出を行って初めて、クリニックで再生医療を提供することができるのです」(同)
法律は“骨抜き”
しかし、安確法が厳しいルールを定めていようとも、クリニックが実際にそれを守らなければ、当然、安全性も絵に描いた餅に終わってしまう。冒頭で紹介したクリニックはその最たる問題例といえる。
先の全国紙記者によれば、
「10月に緊急命令が出されたクリニックも、安確法に基づき提供計画を作成して委員会の承認を得ていました。さらに言えば、このクリニックを運営する医療法人は、自社の培養センターの運営を東証グロース市場に上場しているバイオ企業に任せていたといいます。しかし緊急命令後の厚労省による立ち入り検査で、計画と異なる方法での提供など複数の法令違反が確認され、改善命令が出されるに至ったわけで、“委員会の承認があるから安全”とは到底いえない状況なのです」
つまり、安確法は事実上骨抜きになっているといってよく、一般の患者にとって「本当に安全な再生医療」を見抜くことはほとんど不可能なのである。
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