突出して巧い俳優が揃ったドラマ「ホットスポット」 バカリズム脚本に寄せられる期待

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やっぱり伏線

 12日にスタートした日本テレビの新連続ドラマ「ホットスポット」(日曜午後10時30分)が話題をさらっている。脚本は同局「ブラッシュアップライフ」(2023年)と同じバカリズム(49)。世界観もかなり重なり合う。主演は市川実日子(46)が務めている。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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「ブラッシュアップライフ」は伏線の連続だったが、「ホットスポット」も同じ。第1回の冒頭、自宅で出勤準備をしていた主人公・遠藤清美(市川実日子)の傍らで、こんなテレビニュースが流れた。

「富士浅田市内で相次ぐ謎の……」

 清美の住む山梨県富士浅田市内で超常現象が頻発しているというのだ。小学校の校庭で地上絵が見つかったという。 

 清美はこのニュースを気にも留めなかったものの、その日のうちに勤務先のビジネスホテル「レイクホテル 浅ノ湖」の同僚・高橋孝介(東京03・角田晃広)が、宇宙人であることを知る。宇宙人と地上絵は何らかの形で関わっているのだろう。 

 宇宙人は高橋1人ではなく、複数なのではないか。そう考えると、場面設定をホテルにしたのは絶好だった。宿泊客と従業員の誰が人間で誰が宇宙人なのかが区別しにくい。

 犯行現場をホテルにして犯人を分かりにくくしたエラリー・クイーンの『双頭の犬の冒険』などと同じ発想である。清美の勤めるホテル自体が、宇宙人が多数いるホットスポット(危険な場所、注目の場所)の可能性もある。

 富士浅田市は富士山の麓にある架空の都市。清美はシングルマザーで、中2の娘・若葉(住田萌乃)と暮らしている。ホテルも同市内にある。

「ブラッシュアップライフ」の主な舞台も実在しない埼玉県北熊谷市だったのはご記憶の通り。地方都市を中心にドラマを描くのはバカリズムの拘りなのだろう。

 東京の住民数は日本全体の約11%に過ぎないが、ドラマの舞台はなぜか圧倒的に東京。そのために損なわれているリアリティもある。たとえば清美は自転車通勤なのだが、これも地方でないと現実味が出にくい。

スロー再生用の映像も

 清美はその自転車通勤の帰り道、4トントラックにはねられた。正確に言うと、はねられそうになったところを間一髪で高橋に助けられる。

 瞬時の出来事だったので、映像を超スロー再生で観ないと分からないが、自転車に乗った清美が誤って車道に出てしまう。トラックが目前に迫り、もうダメかと思われたところへ高橋が現れ、自転車を抱えて飛び上がった。

 清美にとっては死にかけたことも高橋に命を救ってもらったことも一大事だったはず。ところが、本人は日常のほんの一コマ程度にしか考えていなかった。

 それどころか清美はこの話を半分忘れていた。だから幼なじみで看護師のみなぷーこと日比野美波(平岩紙)、1学年下で小学校教師のはっちこと中村葉月(鈴木杏)とのカフェでの雑談でも当初は口にしていない。

 清美がこの話を思い出したのはみなぷーのママさんバレーの話が済み、はっちの勤務する小学校の卒業式の話が終わってから。優先順位が低い。高橋の恵まれない未来を暗示していた。

「そうだ、聞いて。この間、仕事帰りに不思議なことがあってさ」(清美)

 清美は2人に洗いざらい話した。高橋から「これ、誰にも話さないでもらえる」と固く口止めされていたのだが、ちっとも気にしなかった。

 高橋の五感や脚力、腕力はケタ違いで、本人はそれを知られたくなかったのである。映画「E.T.」(1982年)では宇宙人が警察や科学者たちに追われたが、高橋は自分もそうなることを恐れていた。

 それなのに清美は高橋が宇宙人であることを深く考えず、雑談のネタにした。「ブラッシュアップライフ」での幼なじみたちとの雑談は昔話がメインだったが、今回はウソがテーマの1つになるようだ。

 人は誰でも大小のウソを吐く。ウソがバレそうになると、懸命に否定する。それを傍から見ていると、おかしい。十分テーマになる。

 その後、みなぷーが「会わせてよー」と高橋との対面をせがみ、はっちも「目の前で能力見たら、信じるかも」と口にするので、清美は揺れる。高橋からは「誰にも話さないで」と念押しされている。もう話してしまったが、露骨には裏切れない。

 そこで、はっちがサラッと悪知恵を働かせる。まず高橋に「幼なじみにだけ話したい」と頼み、次に「宇宙人だと信じてくれないから、能力をちょっとだけ見せてほしい」とお願いするという二段階戦法だ。

「それなら約束破った感じにはならないし」(はっち)

 そんなことはないだろう。実際、高橋は清美の言葉を鵜呑みにしなかった。高橋は「もう言っちゃってない?」と思いっきり疑った。清美は「いや、言ってないです」とウソを吐いたが、「絶対言ってるよ!」と、見透かされた。バカリズムのドラマの登場人物は人間くさい。

 第1回後半のヤマ場もウソの応酬だった。フロント業務を担当する清美のところへ清掃スタッフの中本こずえ(野呂佳代)が歩み寄ってくる。

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