元「おニャン子」新田恵利、大学教授の今 実母の介護体験伝える「人間、信頼している人の言葉はよく聞きます」
「信頼」は大きなワード
「6年半の中で一番響いたのが認知症外来の学長さんの言葉でした。親に認知症を発症した兆候が出て来ても、病院での検査に行ってくれないと悩んでいるとき、こう仰るのだそうです。『人間、信頼している人の言葉はよく聞きます。信頼関係が大切なんですよ』って。信頼は介護の現場でとても大きなキーワードになると思います。皆さん、親御さんから信頼されているかな?」
では、新田は要介護となって混乱するなか、どのように新たな信頼関係を構築していったのか。要介護4でスタートし本人の努力で要介護3になったものの、体の衰えは止められない。
「また母にオムツが必要になったときのことです。泣いて泣いて、ものすごく泣いて、オムツに戻ることを嫌がりました。気持ちは分かっても立つことさえ出来なくなったら、もう無理です。泣き止まない母、説得する私……そして一回目の着地が、リハビリパンツならOKということに。でも、オムツではないから寝返りを打ったり動いたりするたびに、漏れてしまい、シーツからパジャマから布団から、全部を洗わなければなりません。そういうのを何度も繰り返す私たちの姿をみて、母はやっとあきらめたんでしょうね、オムツすることを受け入れてくれました。
実の母娘でも、介護になるとまた違ったコミュニケーションが求められます。信用だけでなく介護者に任せようと信頼してもらうには、そうしたコミュニケーションをとり続けていくことが必要なんですね。先日は大学院生の息子さんとお母さんが一緒に旅行にいかれたという話を聞いて、いい意味で時代は変わったなあと思いました。
私たちの世代は中学生になると、男の子は親と一緒に歩くのが恥ずかしいと拒否するような風潮でしたから。今の『仲良し親子』とは違い、親は尊敬すべき対象でした。どんなに親子の関係が変化しても、元気なうちに、もっとこうしておけば 良かった、ああしておけば良かったって、後で後悔するようなことは昔も今も少なくありません。そうならないようアドバイスしたいと思います」
新田先生は「シニアあるある」として、その経験からシニアになると誰もが自分を構って欲しいと思う「構ってちゃん」だと説いた。親であれ誰であれ、そんなシニアたちと向き合うにはまず「相手を知る。興味、関心を持ってみることだと思います」。
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