香港で空前の大ヒット「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」は「絶対面白くなると思った」 アクション監督・谷垣健治氏が明かす“アツすぎる”撮影秘話

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アクションの途中で場所を“切り拓く”

 谷垣氏にとって九龍城砦は「地形的にすごくアクションに向いている場所」。アクションのギミック(仕掛け)自体は練習場で毎日のように作り上げていった。だが、それらを現場できれいにまとめることはあえて放棄したという。

「チェン監督は絶対、きれいにまとまったものを望むタイプではない。それをこっちがバランスとってまとめてどうすんだっていう気持ちもありましたね。美味しいものを後に残しておくと、食べられなくなることもあるので全部ぶち込んで……それも九龍城砦っぽいじゃないですか、ぐちゃぐちゃになっていくっていう。そこで何が残るか。ドニー(・イェン)とやる時も近いものがありますね。彼もぐちゃぐちゃなものを好むので(笑)」

 思いついたギミックを片っ端から放り込むことは、「何があってもおかしくない場所」という九龍城砦の性質とも一致する。さらに、谷垣氏が好むスタイルにも最適だった。

「足場が悪かったり、アクションができないぐらい狭かったりする場所を、アクションの途中で“切り拓いて”いくんです。最初から物をどかすと、お客さんに『ああ、やりにくいからか』とこちらの“事情”が見える。僕がアクションを作る上で好きなのは、最初から『いかにもアクションをやりそうな』場所ではなく、どこかにぶつかったら場所が広がる、ひっくり返したらまたそこが次のステージになるという風に、アクションをしながら地形を変えていくこと。始まりから終わりまで状況が変わらなかったら、アクションやる意味ないじゃないですか」

「状況を変える」ことで前後のつながりができ、その結果アクションシーンがカットされにくくなるという利点もある。これも谷垣氏が香港映画界で得た経験則だ。

チェン監督が送った鶴拳の画像

 そんな場所で展開するアクション自体も、型にはまったものはふさわしくない。50~60代の大御所俳優たちはそれぞれの伝統武術、30~40代の次世代俳優たちはストリートファイトという壮大な異種格闘技戦になった。

「ルイス・クーとかはトタン屋根のある道場みたいなところでカンフーを習ってたような世代だから、そういう形でもいいなと。逆に若い人たちはストリートファイトのヤンキーアクション、なんでもありの喧嘩みたいな感じのほうが熱血でいけるんじゃないかと思ったんです。ケニー・ウォン(虎兄貴)のアクション練習をしてた時に、チェン監督が『こんなのどう』と送ってきた写真からもいろいろ浮かんできました」

 そこに写っていたのは、香港映画の父と呼ばれた実業家のランラン・ショウが雄々しく両手を挙げ、鶴拳のポーズを決めている姿。だけどちょっと笑える。その時点で谷垣氏は、チェン監督が求めている武術がややオフビートなものであることに気づいた。

「キャラクターにそれぞれスタイルや武器をあてがうのはアクション映画の常套ですが、たとえばケニー・ウォンが鶴拳をやると、現代劇ではなかなか見たことがないような、不思議な絵面になると思ったんです」

「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」新宿バルト9ほか全国劇場にて公開中 配給:クロックワークス

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 圧巻、圧倒、ド迫力のアクションシーンが次々と展開する「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」。第2回【「サモ・ハンは天才。別次元の人」 “九龍城砦”を舞台にした大ヒット作で脚光「日本人アクション監督」が語る香港映画の過去・現在・未来】では、香港と日本で培った“仕事術”や、香港映画・香港アクションの今後について語る。

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