香港で空前の大ヒット「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」は「絶対面白くなると思った」 アクション監督・谷垣健治氏が明かす“アツすぎる”撮影秘話
米アカデミー賞外国語映画賞の香港代表に
2024年5月に香港で公開され、たった2カ月で香港映画史上歴代1位の動員数を記録した大ヒット作「九龍城寨之圍城」が、とうとう日本に上陸した。邦題は「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」。大御所と次世代俳優が大暴れするアクション大作という概要は正しいが、ヒットの要因は他にもある。随所にちりばめられた“香港の記憶”に涙腺を直撃されたという声からは、世代や性別を問わずリピーターが生まれた理由がわかるだろう。
【写真】「すごすぎる…」の声続出! リアル再現された九龍城砦と超絶アクション
作品の舞台は伝説のスラム街・九龍城砦。完全消滅から30年が過ぎた今、実物セットとCGで再現されたその姿も香港を驚愕させた。昨年来日したプロデューサーのアンガス・チャン氏によると、圧倒的なリアリティを生み出した土台の1つは、日本で出版された九龍城砦の写真集だったという。日本で得ていたカルト人気が一役買っていたというわけだ。
それともう1つ、日本としての注目ポイントはアクション監督の谷垣健治氏である。1993年に香港へ渡り、香港映画とアクションの世界を肌で学んだ谷垣氏は、日本映画でも「るろうに剣心」シリーズなどの代表作を持つ。香港はもちろん海外でも活躍する第一線のアクション監督だが、「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」のヒットにより香港で知らない人はいない存在となった。
本作の撮影はコロナ禍の真っ只中に行われた。数々の香港映画で現場経験を積んだ谷垣氏にとっても、これはかなり特殊な状況だったという。第97回米アカデミー賞外国語映画賞の香港代表に選出された本作で、世界的な注目もますます高まっている谷垣氏に、撮影中のエピソードやアクション監督としての考えなどをじっくりと聞いた。
(全2回の第1回)
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ヒロイン不在、恋愛要素なしでも大ヒット
「僕はやっぱり、香港人が喜んでくれたのが嬉しかったですね。『これは俺たちの映画だ!』とみんなで『わっしょい、わっしょい』と盛り上げてくれて、大ヒットさせてもらった感じがすごくあるので。この前、香港でタクシーに乗ってたら運転手が急に振り向いて『ケンジさん、ケンジさん』って。初めてですよ(笑)。運転手が分かるくらいに浸透したんだなと」(谷垣氏、以下同)
広東語を自在に操り、香港の“ノリ”を知り尽くしている谷垣氏だが、「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」の大ヒットは予測できない部分があったという。
「ヒットさせようと思ったら、ヒロインを作って恋愛の要素も入れるでしょうしね。アクションも普通はもうちょっと減らすと思います(笑)。(香港公開前の2024年)4月ぐらいにソイ・チェン監督と会った時、『当たるといいけどね』みたいなこと言ってたら、それがあれよあれよという間に大ヒットして、びっくりしましたね」
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