「犯罪に手を染めているそぶりはなかった」 三菱UFJ銀行元行員・今村由香理容疑者の義父が明かす素顔
“窃盗メモ”
今村容疑者は貸金庫の鍵の管理を任され、無断で解錠できる立場にあった。捜査関係者によれば、
「現金を盗んだ貸金庫の顧客が来店する際は別の貸金庫の現金を補填しておく。こうした手口で被害に気付かれないようにしてたんです。貴金属やインゴットなどの品物を盗んだ場合には、売却するのではなく質屋に質入れし、後日、受け出そうともしていた」
犯行に至った背景は、自身の懐事情だ。
「FX取引で出した損失を穴埋めするためです。加えて、現金をFXなどの投資に流用していたとも。彼女は“獲物”の動きを詳細なメモに残し、間違いが起こらぬよう注意を払っていました。それは過去の経験が少なからず影響していると考えられます」
その経験とは、「小規模個人再生」。自己破産せずに借金を大幅に減らすことができる債務整理の方法で、
「住宅ローンを除く借金総額が5000万円を超えない個人債務者が対象。継続的な収入の見込みがあれば、返済計画を立て、借金減額が認められる。彼女はこの小規模個人再生を13年9月から14年1月にかけて手続きし、東京地裁から認可されていました」
つまり容疑者は、貸金庫の窃盗に手を染め始めたとされる20年4月の7年ほど前、借金漬けの状態に陥っていたのである。
「当時の借金もFXで作ったものとみられます。競馬でも、との情報もある。ともあれ、小規模個人再生で彼女は“身軽”になったはずでした。しかしまたFXで失敗し、貸金庫に手を出したわけです。“窃盗メモ”を作って損失穴埋めに奔走しながら通常勤務を続けた。挙げ句、銀行からも告発されるに至った。並みの神経では耐え切れないと思うんですけどね」
「そんなそぶりはなかった」
FX地獄に窃盗工作。今村容疑者はのっぴきならない状況にあったが、
「これまで、そんなそぶりはまったく感じられませんでした」
と、義理の父親が語る。
「なので申し訳ありませんが、息子の妻がやってしまった行為について詳しいことは分からないのです。私にとって彼女は、銀行に勤めている、ごくふつうの嫁でした。それと、二人は離婚などしていません。少なくとも、私はそのような話は聞いていない」
手が後ろに回り、年老いた義父の信用も失うことになった。