「陰謀の類い」が選挙結果を左右する時代に SNS選挙の台頭を許したマスコミの責任は 「無味乾燥な報道をしてしまった」
「情報は何でもありになった」
京都大学名誉教授の佐伯啓思氏の話。
「欧米や日本のような民主主義社会にとって、『客観的な事実』こそが民主政治の大前提でしたが、SNSはその前提を破壊してしまいました。SNSは、事実か意見か臆測かを問わない、といった特徴を持っており、既成メディアにいわばゲリラ戦を仕掛けました。既成メディアが『偏向』しているにもかかわらず、それを『事実』であるかのように装っていた、その弱点をついたわけです」
その結果として、
「情報は何でもありになりました。それでは『事実』と『意見(臆測)』、『公的なもの』と『私的なもの』などを区別することで成立していた政治的な公共空間が担保できません。これは民主主義に対しては、かなり破壊的なことでしょう」(同)
政治的な健全さ
それに対してわれわれが取れる手段はあるのか。
「名案はありませんが、強いて言うと『民主主義や個人の自由を疑え』ということです。そういう政治的な健全さの意識を取り戻す以外にないと思います」(佐伯氏)
目下、選挙のSNS戦略を請け負ったとされる社長のPR会社に報酬を支払った、として公選法違反の疑いで刑事告発されている斎藤氏。仮に起訴され有罪となり、再び失職して再出馬の資格を失うと「SNSで笑ってSNSに泣く」ことになるが果たして――。
前編【「“推し活”の一員としてエンタメに参加」 兵庫県知事選でなぜ「政治に興味がない人」までが熱狂したのか】では、SNSによって“推し活”と化した選挙のあり方について報じている。
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