「陰謀の類い」が選挙結果を左右する時代に SNS選挙の台頭を許したマスコミの責任は 「無味乾燥な報道をしてしまった」

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「『マスコミの文法』が通じなくってきている」

【前後編の後編/前編からの続き】

「暴走SNS」によって結果が決まった選挙。昨年11月、斎藤元彦知事(47)が再選された兵庫県知事選挙を一言で評するとそうなる。異例の事態と熱狂の正体は何だったのか。われわれはそれにどう対峙すればいいのか。今年の参院選への影響について、専門家に聞いた。

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 前編【「“推し活”の一員としてエンタメに参加」 兵庫県知事選でなぜ「政治に興味がない人」までが熱狂したのか】では、SNSによって“推し活”と化した選挙のあり方について報じた。

 今回の兵庫県知事選は“オールドメディア”の新聞・テレビvs.“ニューメディア”のSNSという構図で語られることもある。

「兵庫県知事選では“マスコミが真実を隠している”などということが盛んに言われていましたが、その一因は『マスコミの文法』が通じなくなってきていることにあるのではないか、と感じています」

 と、社会学者で日本大学危機管理学部教授の西田亮介氏は言う。

「テレビ・新聞に触れてきた人からすれば、選挙に影響が出ないよう選挙期間中に疑惑追及を休止したり報道そのものを控えたりすることがあるというのは『お約束』でした。それが最近では日常的にテレビ・新聞に触れる人が減ったことで、その『お約束』が通じなくなってきているのです」

無味乾燥な選挙報道をしてしまったマスコミ

 ノンフィクション・ライターの石戸諭氏は、

「マスコミは公平性の観点からいつも通りの無味乾燥な選挙報道をやってしまった。一方、YouTubeでは、斎藤知事は悪くないという趣旨の膨大な情報が与えられるわけです。それはYouTube情報に流されますよね。今回の兵庫県知事選は、YouTubeが新しいマスメディアとしての地位を示した選挙だったと思います」

 今はスマホだけではなくテレビ画面でもYouTubeを見られる。

「そうなるとある意味、YouTubeというテレビ局ができて、そこには自分好みの番組が無数にあるという状態。硬直したオールドメディアに取って代わる新マスメディアとしてYouTubeの選挙への影響はますます増していくと思います」(同)

公選法の穴を突いた出馬

 そのYouTubeを駆使して今回の選挙に大きな影響を与えたのが、政治団体「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首である。氏は立候補するも自身の当選を目指さず、斎藤氏を応援。公選法の穴を突いたイレギュラーな出馬だった。

 JX通信社代表取締役の米重克洋氏が言う。

「Googleトレンドなどから立花氏のYouTubeの検索ボリューム(検索された回数)を見てみると、昨年10月24日の立花氏の出馬表明から4日たった28日ごろに大きく伸びていることが分かります。その後30日ごろから斎藤氏の検索ボリュームが徐々に伸び始めます」

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