「“推し活”の一員としてエンタメに参加」 兵庫県知事選でなぜ「政治に興味がない人」までが熱狂したのか
SNSで選挙結果が変わる
【全2回(前編/後編)の前編】
「暴走SNS」によって結果が決まった選挙。昨年11月、斎藤元彦知事(47)が再選された兵庫県知事選挙を一言で評するとそうなる。異例の事態と熱狂の正体は何だったのか。われわれはそれにどう対峙すればいいのか。今年の参院選への影響について、専門家に聞いた。
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2024年は、SNSが暴走を始めた年として、後世に語り継がれることになるかもしれない。
アメリカでは、ドナルド・トランプ氏がSNSを大いに活用して大統領選に勝利した。また、わが国でもSNSの情報が選挙結果に直接結び付くことが証明された。しかも三つの大きな選挙で同様の事態が起こったのだから、これはもう「再現性」のある出来事と言わざるを得ないだろう。今年は夏に東京都議選、7月までには参院選が行われる予定で、そこでもSNSが選挙結果に影響を与える可能性は大いに考えられよう。今後、民主主義の根幹である選挙という舞台で、SNSはいかに暴れ回ることになるのか。それを読み解くには、過去を検証しなければなるまい。
永田町の内と外という対立軸
昨年7月の東京都知事選で事前の予想に反して2位に食い込んだ石丸伸二氏(42)。10月の衆院選で公示前の4倍となる28議席を獲得した国民民主党の玉木雄一郎代表(55)。そして11月、自らの「パワハラ疑惑」などに端を発する兵庫県知事選挙でまさかの再選を果たした斎藤元彦知事。まず指摘しておかなければならないのは、石丸氏と玉木氏が元々「ネット地盤」を持っていたのに対して、斎藤氏はそうではなかった、という点。斎藤氏はXのアカウントは持っていたものの、選挙前にそれを効果的に使っていたわけではない。公式YouTubeチャンネルが開設されたのも、選挙への立候補を表明した後のことだった。
「石丸さんは広島県安芸高田市長時代から市議会と対立して注目を浴びていて、安芸高田市のYouTubeチャンネル登録者数は全国の自治体の中で1番でした。安芸高田市の人口は2万6000人程度ですから、かなり特殊な事例といえます」
と、語るのは、JX通信社代表取締役の米重克洋氏。
「そうしたネット地盤を持っていた石丸さんが選挙で打ち出したのは国政与党vs.野党とは別の対立軸です。マスコミはいつも通り小池百合子vs.蓮舫をあおっていたわけですが、石丸さんは有権者が持っていた、与党のみならず野党を含めた既成政党に対する不信感を突いた。『政治屋の一掃』を叫び、いわば永田町の右左ではなく、永田町の内と外という対立軸で戦ったのです」
それがSNSなどを通じて主に若年層に響き、健闘につながったわけだ。
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