「21世紀には素晴らしいテクノロジーが人間を幸せにしてくれる」という予測は大ハズレ 空飛ぶクルマに睡眠学習…2025年になっても理想の世界は遠い(中川淳一郎)
2025年になりましたが、若干落胆している自分がいます。というのも、1973年に生まれた自分は少年時代から、21世紀は素晴らしいテクノロジーに溢れ、夢のような生活がもたらされる、といった論にさらされ続けてきたからです。
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いわく、車は空を飛んで渋滞がなくなる。「睡眠学習」のおかげで勉強する必要なんてなくなる。
しかし、現実的に人の世はあまりに泥臭い。政治の世界では、自民党総裁選に出馬するに際して「推薦人20人が必要で、○○氏は議員会館から電話し続けた」「××氏は、協力を取り付けるべく、重鎮の△△氏と会食した」なんていうのが現実の光景です。結局「電話」「仲の良さ」が雌雄を決するではありませんか。
プロ野球のFA選手にしても、ソフトバンクの甲斐拓也捕手が巨人と契約したことについてスポーツ報知はこう報じます。
〈身も心もオレンジ色に染まっていた。甲斐は球団カラーのネクタイを着用して会見に臨んだ。移籍の決め手を問われると「阿部監督です」と即答した〉
いや~、浪花節! 泥臭い! 21世紀になって25年目にしてなお甲斐選手の判断にテクノロジーは介在せず、決め手は「阿部監督が好き」だった!
高校野球の甲子園大会ではごく一部に例外はあれど、球児たちは相変わらず丸刈りが多い。首都圏の電車は通勤通学時間帯に混雑し、駅員は「ドアが閉まりますッ!」と何十年も絶叫し続けている。空飛ぶ車とか2025年にはあるはずだったのでは? なんで1960年代と同じ光景が繰り広げられているのでしょうか。
夢の超特急リニアモーターカーなんて80年代の学習雑誌にも原理が記述されていました。しかし、「静岡県知事の反対によりリニア計画は暗礁に乗り上げた」とかいう泥臭い理由で頓挫を余儀なくされました。
ロケットの発射実験も失敗の連続ですし、マッチングアプリで恋人や結婚相手を見つけても破局や離婚はつきものです。20世紀の人間が叫んだ「21世紀には素晴らしいテクノロジーが人間を幸せにし、合理的な生き方をもたらしてくれるはずだ!」という予測はものの見事に外れました。
インターネットのおかげで買い物や航空券の予約やコミュニケーションは圧倒的に容易になりました。ここ数年、国会議員の仕事も含めた役割をAIに代替させよ、といった声もあります。ただ、基本的に人間はカネを稼がなくてはならず、対象となりそうな仕事に就く人々はこうした声に反対し、人間の判断のほうが正しいと主張して自己の権益を守ろうとします。
理想の世界は遠し、です。
21世紀への憧れは、企業名に「21」を付けることに象徴されていました。「レオパレス21」「リーブ21」「センチュリー21」などなど。彼らは2101年まで残っていたら「22」に変えるのかしら?
そして「ドラえもん」ですよ。22世紀から来たドラえもんがもたらす夢のグッズが多々登場します。空を飛べるタケコプターやら、どこでも行けるどこでもドアなんかが名高いです。が、人類があと75年でそこまで到達できるとは思えません。
テクノロジーに頼らず、己の能力を磨きましょう。