イチロー氏が日米ダブル「野球殿堂入り」も…米では「満場一致」予想なのに、なぜ日本の得票率は「92.6%」に留まったのか
高水準の得票率も……
プロ野球オリックスや米大リーグ、マリナーズで活躍したイチロー氏が16日、日本の野球殿堂入りを果たした。候補者入り1年目での選出は2018年の松井秀喜氏、金本知憲氏以来で、イチロー氏の比類ない功績を考えれば当然と言えるだろう。21日(日本時間22日)には、米国の野球殿堂が今年の殿堂入りメンバーを発表する予定で、こちらでも候補者になって1年目での選出が確実視され、史上2人目の満票となるかに注目が集まっている。新年早々、野球界にめでたい話題を提供してくれているが、日本の報道関係者にはある懸念が広がっているという。「米国で満票での殿堂入りを果たすと、日本のスポーツメディアの見識が問われる事態になりかねない」(スポーツ紙デスク、以下同)というのだ。
日本の野球殿堂では、プロ野球関係者は「競技者表彰」というカテゴリーで選出される。これはさらに「プレーヤー表彰」と「エキスパート表彰」に分かれ、前者は純粋に選手としての実績で、後者は指導者などでの貢献も加味して選考されることになっている。イチロー氏が選ばれたのは「プレーヤー表彰」で、プロ野球取材歴15年以上の報道関係者が投票資格を持ち、候補者リストの中から最大7名までの連記で投票。有効投票数の75%以上で選出される仕組みとなっている。
イチロー氏は今回、349票のうち323票を獲得。得票率92.6%で選出ラインの75%を大きく上回り、2018年の松井秀喜氏の91.3%も超える高水準となった。さすがの数字とも見ることもできるが、一方で、米国で満票、もしくはそれに近い票数を集めるとなると話は変わってくる。なぜ日本でイチロー氏に入れなかった投票者が7.4%もいたのかという点に関心が集まってしまうからだ。
イチローとメディアの関係
「日本の野球殿堂は大リーグでの活躍も選考の材料となる一方、米国はメジャーでの実績のみで判断されます。当然、米国の方がはるかにハードルが高い。松井さんも野茂英雄さんも日本の殿堂には入っていますが、米国の殿堂入りは果たせなかった。現時点で、イチローさん以外に可能性がある日本人選手は大谷翔平選手だけでしょう。それほどの狭き門である米国の野球殿堂に文句なしで選出されそうなイチローさんに、日本で満票ではないというのは、米国では理解されないかもしれません。『イチローを外した投票者は何を考えているんだ』という見方をされても致し方ない」
イチロー氏は20歳だった1994年に、プロ野球史上初めてシーズン200安打を達成。その年からマリナーズへ移籍するまで7年連続でパ・リーグの首位打者に輝いた。メジャー1年目の2001年に首位打者と盗塁王を獲得してリーグMVPと新人王を同時受賞し、2004年にはシーズン262安打の大リーグ記録を樹立。メジャーだけで3089安打を放ち、日米通算では4367安打と文句のつけようのないキャリアを誇る。選手としての実績にケチをつけるところはないものの、マイナス要素として働いた可能性があるのがメディアとの関係の悪さだと一部で指摘されているのだ。
「イチローさんが難しい取材対象だというのは業界内では広く共有されていた認識で、取材者のレベルが低いとみると、容赦なく厳しい対応を取ったり、まともに相手をされなかったりということはよくありました。それがイチローさんのプロフェッショナリズムで、取材する側としては見識を深める努力をして食らいついていかなければならない。とはいえ、冷たくあしらわれて悪い印象を持ったままという人がある程度いるのは事実だろうと思います」
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