「1回3200万円」最新がん治療がリューマチに効く!? 「白血病には“逆転満塁ホームラン”とも言うべき顕著な効果がある」
リューマチなど自己免疫疾患に苦しむ患者は国内だけで約800万人。がんの先端治療が、このやっかいな病気の特効薬になるかもしれない。
***
なぜ“がん治療”がリューマチの特効薬に?
昨年12月27日の日経速報ニュースによると、製薬大手のノバルティスは「全身性エリテマトーデス」の患者に対し、国内で治験を開始したという。耳慣れない病名だが、全身の臓器が炎症を起こす、リューマチと同じ免疫障害だ。今回の治験の対象は、「CAR-T(カーティー)」という治療法。もとはがんのために開発された最新の治療法だが、どんな仕組みで自己免疫疾患にも応用できるのだろうか。
一般にがん細胞は自分が攻撃されないように、免疫の力を弱める機能を持っている。CAR-T療法は免疫細胞を取り出し、遺伝子改変して攻撃力を強化。再び体内に戻し、がんを攻撃させるというものだ。
医療ガバナンス研究所の上昌広医師が解説する。
「この治療法は、がんの中でも白血病に対して“逆転満塁ホームラン”とも言うべき顕著な効果があります。日本でも2019年に『キムリア』という製品が承認され、その後も同様の治療法が承認されている。ただし、胃がんや膵臓(すいぞう)がんといった固形がんへの応用は進んでおらず、人によって激しい副作用もあります」
コストが押し下げられる可能性も
白血病の多くは免疫に関わる「B細胞」のがん化が原因だと分かっている。一方、自己免疫疾患も、B細胞が勝手に暴走することで発病する。CAR-T療法が得意とするのは“不良化”したB細胞を見つけて破壊することだ。ドイツの大学の研究チームが発表した論文によると、CAR-T療法を施した全身性エリテマトーデスの患者全員に改善が見られたという。もちろん、将来的にはリューマチなどの膠原(こうげん)病にも治療の道が開かれる。
患者にとっては福音のようなニュースだが、問題は治療費。現状、CAR-T療法は1回約3200万円もかかる。実際には、公的医療保険と高額療養費制度で数分の一に抑えることができるが、自己免疫疾患の患者にとっては頭の痛い問題になりそうだ。
「現状、この療法は対象のがんが限られているため高額になっている面もある。将来的に実施数が増えれば、コストを押し下げられる可能性もあります」(科学ジャーナリストの緑慎也氏)