「身内ノリとイジリ」で“ファミリー”を作ってきたフジテレビ 中居正広のトラブル、背景にテレビ業界の悪習が
女性トラブル問題が報じられ、炎上が収まる気配のない中居正広(52)。ライターの冨士海ネコ氏は、問題の背景にはテレビ業界の悪しき「ファミリー・ビジネス」文化が存在すると分析する。
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昔からテレビやエンタメ業界で使われる「ファミリー」という打ち出し方に苦手意識があった。まるで家族のような仲良しぶりはほほ笑ましい。でも行き過ぎた身内ノリさえも「ありがたいもの」として押し出してくる客観性の無さというか鈍さに、ちょっと気持ち悪さを覚えるのだ。
だから中居正広さんのトラブルにフジテレビが関与している疑いがあると報じられた時、あまり驚かなかった。「めざましファミリー」「ヘキサゴンファミリー」と、出演者の結束の強さを武器にする演出をお家芸としてきた局だ。身内ノリとイジリに耐えられるかどうかで「ファミリー」の一員になれるかどうかが全国に発信される様子は、ある種悪趣味であるからこそ視聴者の目を引くことに成功した。選民意識と排他性に基づく独自ルールは、確かにファミリーの面々には心地よく、番組への帰属意識を強くしたことだろう。一般的にはアウトな行動も、ファミリーなら「はしゃぎ過ぎ」程度で許してくれるし守ってくれる。だって家族なのだから、と。
選ばれし者に与えられる、痛みを伴う洗礼と庇護。その「ファミリー」システムは、中居さんが長年所属してきた旧ジャニーズの在り方にもよく似ている。だからフジはSMAPとの親密度が高く、中居さんが独立後も良好な関係を築いていたのだろう。事情の分かる身内でスタッフも共演者も固め、MCがやりやすい環境を作ることを得意としてきた。芸能界の友人が少ないと公言する中居さんだが、例外ともいえる存在の松本人志さんと組んだ「まつもtoなかい」は、まさにフジの「ファミリー・ビジネス」真骨頂という印象だ。
昔のテレビ業界は別業界からの中途人材をほとんど採らなかった。硬直化した組織と特殊な不文律を「おかしい」と思う人間はいらないし、「よそ者が分かったような口を聞くんじゃねえ」と突っぱねる風潮もあった。男尊女卑思想も強く、セクハラに泣かされてきた女性社員や関係者も少なくない。実際、中居さんの疑惑が報じられた時、「業界ではよく聞く話」と訳知り顔をする識者が続々と出てきている。
中途人材の少なさ、男性社会、身内ノリとファミリールール。それは松本人志さんを取り巻く吉本芸人界にも通じる文化ともいえよう。中居さんや松本さんら、冠番組を持つ「家長」の機嫌を取ることが最優先の身内文化が、騒動の原因の一つだったのではと言っては言い過ぎだろうか。フジテレビは公式に社員の関与を否定したが、「週刊文春」では匿名だが新たなフジの現役女子アナからの告発が出るなど、まだまだ炎上が収まる気配はない。
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