「ビザ緩和」で今年は1000万人が来日か…中国「団体旅行客」の滞在期間「倍増」で、より深刻化する“観光公害”
買い占められるチェンマイ
実際、タイ第2の都市で、有数の観光地であるチェンマイではこの10年間で、中国人だけで1000戸以上の住宅を購入しており、その額は30億から50億バーツ(約132億~約220億円)に達していることが分かっている。1戸当たり300万バーツ(約1317万円)と、タイの物価からみても決して安い価格ではない。
タイの英語版ニュースサイト「ベナールニュース」がチェンマイ県庁の報告として報じたところでは、同市の人口は約162万人、中国人は約7190人、その他の国籍の人が約15万人で、それほど中国人は目立たないが、昨年1年間でチェンマイを訪れる観光客のうち、中国人は最も多く約20万人にも達している。
中国とタイは相互にビザ免除しており、中国人観光客は1回の訪問で最大60日間、タイに滞在することができる。日中両国の場合は相互にビザ免除はしていないが、富裕層は10年間有効ビザを1回発給されれば、定期的に訪日することは可能なだけに、富裕層の滞在の事情はタイとそれほど変わりはないといえよう。
チェンマイを訪問する中国人富裕層は60日近くチェンマイに滞在し、その後中国に帰り、その数日後にはチェンマイに戻るという生活を繰り返している人が多いという。このため、常連の中国人はチェンマイでセカンドハウスを購入しており、地元民は「チェンマイが第2の故郷になっている中国人が増えている」と語っているほどだ。
特に、チェンマイの新しい住宅開発地であるハンドン地区には、中国語の看板が目立つため、中国本土の一角に迷い込んだような気分になることもあるという。
チェンマイの不動産価格は中国よりも数分の1低く、格安航空会社は中国の主要都市からの直行便を提供しているため、移動時間は2~3時間だという。中国で急成長している中産階級にとって、チェンマイは手頃な価格の楽園になりつつあるようだ。
ニセコの状況
日本の各都市と中国の北京や上海など中国沿海部の都市を結ぶ航空便も、所要時間は3時間ほどだけに、このチェンマイの例をみると、日本の観光地が中国人富裕層の「第2の都市」と化す可能性もあながち否定できないのではないか。
とくに、北海道有数の観光地であるニセコでは1泊15万円から23万円の貸別荘が中国人観光客の予約で埋まっている実態がある。また、1棟5億円の別荘や、やはり億単位の高級コンドミニアムが中国人富裕層によって購入されていると報道されている。
その場合、さきにみたように、日本人訪中観光客への「ビザ30日間有効」に対応した日本政府の「返礼」が裏目に出ることも考えられるのである。
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