イオン?それともドンキになる?「西友」の行く末が、単なる売却話以上の意味をもつワケ

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 西友の株式の85%を保有しているアメリカの投資会社KKRが売却を検討したことで、イオン、ドンキ(PPIH)、九州のディスカウントストアのトライアルが買収に名乗りをあげていると報じられた。西友の消滅危機が意味することを、消費経済アナリストの渡辺広明氏が解説する。

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客足まばらな売り場に感じた不振の理由

 筆者はバブル崩壊直後の1992年、ローソンの店長をしていた。東急田園都市線の市が尾駅の近くに住んでおり、数少ない休日の買い物は、駅近くの西友が生活の糧になっていた。

 食品を買ったり、1990年に西友のプライベートブランドから独立したばかりの無印良品などをよく利用した。当時は活気のある店舗で、2階のペットコーナーが印象に残っている。仕事に追われる日々に安らぎを求め、グラミーという熱帯魚を水槽と共に衝動買いした思い出がある。

 売却報道を受け、ノスタルジーもあって西友の市ヶ尾店に行ってみた。だが、そこには総合スーパーとしての西友は既に無く、1階と地下1階に食品を中心とするフロア、2階には100円ショップのセリアと格安美容室のテナントが入っていた。訪問が土曜日の午前中だった事もあるが、お客もまばらで、活気のあったころのイメージとのギャップで猛烈な寂しさを感じた。

 西友をめぐっては、2002年に世界NO.1のリアル小売業である米ウォルマートとの資本提携が始まり、2005年に連結子会社、2008年には完全子会社となった。ウォルマートのメイン戦略であるEDLP(Every Day Low Price、安売りセールをしない代わりに常に低価格で商品を販売する)に舵を切った時期もあるが、うまく機能しなかった。

 市ヶ尾店の売り場は「しあわせ価格」「週末限定価格」プライベートブランドの「みなさまのお墨付き」など、価格に対する様々なPRがあり、結局、何がお得なのか、非常に分かりづらい売場になっていた。消費者が戸惑いを感じるような訴求が、売上不振を加速させている一因となっているのは間違いない。

 また、賞味期限間近の商品や、シーズンが終わった日用品の安売りのワゴン販売が至るところで展開しており、売場の寂しさと鮮度の無さを倍増させる状況になってもいる。

 ウォルマートは今も株式の15%を保有している、世界一の同社が20年間も関与しても通用しなかったという事は、裏を返せば小売業が基本ローカルのビジネスであるという事を認識させられる。同時に、消費者の要求レベルが高い日本のマーケット攻略は世界的にもなかなかレベルが高く、外資であるウォルマートは取引慣行も含めたより深い研究が必要であった事は間違いないだろう。

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