「帝劇」とは大違い…リニューアルの見通しが立たない「国立劇場」の危機的状況 入札予定価格は“1400億円”に
解体工事のめどすら立たず
対照的なのが、一昨年10月に閉場した千代田区隼町の国立劇場だ。
日本の伝統芸能を支える“ナショナルシアター”のはずが、いまだに解体工事のめどすら立たずに野ざらし状態が続いている。
文化部記者も肩をすくめる。
「当初案では、ホテルやレストランを併設した複合施設になる計画でした。ところが、一昨年と一昨昨年に実施された事業者選定の入札が不調に終わった。令和11年にはこけら落としのはずでしたが、いまもまったく見通しが立っていません」
昨年8月、文化庁は入札のハードルを下げるべく、必須としていたホテルの併設という条件を任意とした。さらには大手旅行会社と提携し、劇場内の舞台裏や楽屋といったバックヤードを見学できる一般向けのツアーを始めている。
「並行して3度目の入札準備が進んでいますが、当初の入札予定価格は最低でも800億円ほど。いまでは資材や人件費などの高騰で、2倍近い1400億円程度まで膨れ上がっています」
焦る関係者が注視する3度目の入札も、今年度中に行われるかは不明と伝わる。
「仮に時期が決定しても、スケジュール通りに実施できるかどうか……。また、解体から竣工までには最低5年は必要で、営業再開は早くても7年後なんです」
隣接する国立演芸場も閉場中。昨年暮れには記者会見で、落語協会の柳家さん喬会長(76)が「もっとちゃんとしろよ!」と一喝。国民の多くも同じ思いだろう。