ベネズエラ化する韓国 3年前に鈴置高史氏が「民主主義の崩壊」を予言できたワケ

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 昨年末の戒厳令を機に、無政府状況に陥った韓国。内戦を回避できるのか。2年以上も前から「韓国の民主主義は崩壊した」と警告を発していた鈴置高史氏に混迷の本質を聞いた。

無政府状態に

――韓国が混乱しています。

鈴置:1月3日に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の逮捕に動いた高位公職者犯罪捜査処(公捜処)と警察を、大統領警護処が官邸前で阻止しました。にらみ合いは1月14日になっても続いています。

 法の執行ができない――無政府状態です。かといって公捜処が実力で逮捕に踏み切れば、内戦に陥ると心配する声が高まっています。

 左派は尹錫悦大統領を内乱罪で告発し、その勢いに乗って一刻も早く憲法裁判所で弾劾を確定したい。弾劾審判の期間は昨年12月14日に国会が訴追を決めてから180日以内ですから、6月12日が期限です。なお、朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾は91日で審判が下りました。

 一方、保守は一刻も早く――弾劾訴追の審判が下って大統領選挙の実施が決まる前に、野党第1党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表の選挙法違反を確定して出馬できないようにしたい。

 李在明代表は断然トップの支持率を誇り、大統領選挙が行われれば当選の可能性が高い。ただ、2024年11月15日に選挙法違反で有罪の一審判決を受けました。最高裁で懲役1年・執行猶予2年の刑が確定すれば国会議員を失職するうえ、10年間は立候補できません。

 最高裁は一審判決から6カ月以内に判決を下すよう定められており、これが守られるのなら5月15日が期限です。左派は最終審の判決が下りる前に大統領弾劾を確定し、大統領選挙に持ち込みたいのです。

年金を使ってウォン買い支え

 要は、大統領逮捕が左右の戦いの天王山となっているわけです。ところががっぷり四つのままで、いつになったら「内戦」が回避できるのか、先が見えない。ウォンは売られ、1月14日午後3時30分現在は1ドル=1463.2ウォンを付けています。

 ブルームバーグは1月14日、「韓国年金基金がドル売り開始、市場でウォンを下支え―関係者」(日本語版)で1月13日から年金を管理する国民年金公団がウォンの買い支えに入った。限度は500億ドル――と報じました。

 年金が自国通貨の買い支えに入るのは異例の事態です。普通は韓国銀行が外貨準備を使って介入しますが、「実弾」を使いつくしたのかもしれません。

戒厳令、大統領を弾劾、そして逮捕状……政治不安でウォン安の恐怖に直面する韓国」で指摘した通り、韓国の外貨準備はジリジリと減っています。

 ウォン相場が決壊する「マジノ線」は1500ウォンと言われます。韓国は政治も経済も崖っぷちに立っているのです。突然の混迷には驚く日本人も多いでしょう。韓国人でさえそうなのですから。

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