妻の親友との「一夜のあやまち」は、洗脳計画の一環だった… 46歳夫が語る“家庭崩壊”とそのてん末
桃子さんも現れて…
滋和さんは黙って康子さんを抱きしめた。ごめん、違うんだ、きみのことは本気で好きで大事なんだ、だからできなかったんだと思う。そう言った。
「桃子を抱きながら、最高だ最高だって叫んだんでしょと康子が言いました。そんな記憶はなかったけど、確かに桃子さんには気を遣わずにオスでいられたなという思いはあった。でも言葉にするとなにもかも嘘っぽくて、なにも言えなかったんです」
そこへ桃子さんが登場した。康子さんが呼んだらしい。いったいなにがどうしたのかと面食らう滋和さんに、桃子さんは文句を言い始めた。
「桃子さんは、そもそもあなたはなぜ康子と夫婦らしいことをしないのか、それなのになぜ私とはしたのかと。女性にはわからない感覚なんじゃないかなと言うしかありませんでした。康子は『私が女っぽくないから……』ともじもじしてる。そういうときでも康子は穏やかなんですよ。『康子はこういう人なの、わかってるでしょ。あなたは康子を家政婦のように使って、康子の気持ちなんかまったく考えなかった』と桃子さんはまくしたてました。好きという感情を超えた大事な存在なんだ、康子はと言ったけど、なんというのか自分の言葉が上滑りしている気がしましたね」
自分に愛は語れない。滋和さんはしみじみと自分の不幸を感じた。若いころは不幸だとは思っていなかったが、康子さんとの生活で「人並みの幸せ」を知ってしまったために、自分は不幸だったと認識したのだろう。
「いったい、どうするつもりなのと桃子さんは僕に詰め寄ってきました。もういいわ、と康子が言っても、いいじゃすまないの、ちゃんとけじめをつけてもらわないとって」
まるで「桃子さんの手下」
膠着状態が続いた。誰も声を発しない。しばらくたって桃子さんが言った。
「別れてあげて。康子にはもっといい人がいると思う。今ならまだ子どもだって授かることができるかもしれない。康子は子どもをほしがってるのよ」
3年前、滋和さんが43歳のときだった。康子さんは桃子さんに促されて離婚届を出してきた。ふたりきりで話すこともなく、離婚するつもりなのかと滋和さんは驚いた。桃子さんは彼に慰謝料を200万円要求してきた。
「おかしいでしょ、桃子さん本人が僕の浮気相手なんですから。そのことを康子はどう思っているのか……。桃子さんは『このお金は康子の今後のためのものなの』と言っていましたが、なんだか僕は康子が桃子さんの手下のように思えてきたんです」
女同士、一見、仲が良さそうに見えて片方がもう片方に従属しているということはある。ママ友同士で殺人事件さえ起こった話も世間を驚かせた。
「気持ち悪さが先に立って、僕は離婚届にサインをしました。康子は桃子さんと連れだって出ていった。数日後には僕の留守に荷物を取りに来たみたいです。こんなにあっさり別れていいのかと思いましたが」
その後、彼はうつ状態に陥り、自ら病院の門を叩いて自主入院をした時期がある。
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