妻の親友との「一夜のあやまち」は、洗脳計画の一環だった… 46歳夫が語る“家庭崩壊”とそのてん末
「彼女と結婚して不幸になるはずがない」
38歳のときに、ある施設でともに働き、1年ほど交際を続けてきた康子さんと結婚した。5歳年下の康子さんは心根の優しい人で、彼を常に優しくサポートしてくれた。
「根っからのホスピタリティの塊みたいな女性でした。僕もアシストが向いていると感じていたけど、彼女はアシストどころじゃなくて相手をまるごと受け入れ、支えていく。ときに自分を犠牲にしてもいい。そんな感じだった。彼女の母親がそういう献身的なタイプだったようです。それで彼女も結婚するなら家族に尽くしたいと言っていました。僕自身は、家族に尽くす女性というのがあまりイメージできなかったけど、彼女と結婚して不幸になるはずがないと思いました。そのくらい包容力のある人だった」
結婚と同時に起業したのだが、康子さんは懸念ひとつ示さなかった。あなたのしたいことをするのがいちばんいいと笑顔を向けた。それから滋和さんは準備を加速させ、自らの事業を立ち上げた。ビジネスとして協力してくれる人もいた。
「疲れて帰ってくると、康子はおいしいものを作っておいてくれる。彼女も働いているのだから、自分の分はやるからいいよと言ったのですが、『私、料理作るのが好きなの。食べてくれたらうれしいと思ってるだけ』って。どうしてこんないい人がいるんだろうと不思議でさえありました」
康子さんともっと一緒に過ごしたい。そう思って、たまに休みがとれるとふたりで外食を楽しんだ。決して豪華なものではなかったが、町をぶらぶらしながら「この店」と決めて入ったときに「大当たり」だとふたりで顔を見合わせて喜んだ。ささやかな幸せというのは、こういうことを言うのだろうと彼は、生まれて初めて落ち着いて暮らしを楽しんだ。
「ただ、僕はいつかこの幸せが壊れるのではないかと内心、ビクビクしていました。母が亡くなったときのことを強烈に思い出して眠れなくなることもありました。康子に死なれたらどうしよう、僕は生きていけない。康子を神聖視しすぎたんでしょうか、セックスができなかった。子どもができるのが怖いという思いもあった。でも康子は、僕が彼女のことをきらいなのではないかと悩んでいたみたいです」
結婚して5年たっても性的関係はないままだった。手をつないで寝るのが日課となっていった。老夫婦みたいだなと彼は心の中で思っていたが、その状態がいちばん快適でもあった。
妻の親友・桃子さん
康子さんには、高校時代から仲よくしている桃子さんという親友がいた。結婚したときも真っ先に家を訪ねてくれたのが桃子さんだった。結婚にあたっては滋和さんが康子さんの両親と食事をしたくらいで、式らしい式を挙げなかったため、桃子さんはお祝いを持って駆けつけてくれたのだ。
「桃子さんは気っ風のいいおねえさんという感じの人で、同い年なのに康子より妙に落ち着いたオーラがありました。昔はワルだったからねとニヤッと笑っていたことがあります。本当かどうか知らないけど、確かにヤンキー風の趣はあった」
康子さんが夜勤のある日、桃子さんがワインをぶら下げてやってきた。滋ちゃんと飲みたくてさと彼女は慣れ慣れしかったが、それもいつものことだから気にもとめずに家に上げた。そして彼はしこたま飲まされて潰された。
「ふと目を開けると、桃子さんの顔が真上にあった。ねえ、いいでしょと彼女が言ったとき、お酒の匂いと同時に彼女のつけている濃厚な香水の香りが漂ってきて……。なんだかわからないけど急に野生を刺激されたというか」
理性が吹っ飛んだ彼は、桃子さんに馬乗りになった。何度試しても康子さんとはできなかったのに、桃子さんとはうまくいった。うまくいくどころか自分でも経験のないような興奮に包まれたという。自分が自分ではないようだったと彼は照れた。
「数日後、康子が『桃子が、あなた、とってもよかったって』と言ったんです。唐突に、何の脈絡もなく、食事中にですよ。僕、思わずごはんを吹きだしてしまった。康子は『私以外ならできるのね』って。違うんだと言ったけど、自分でも何が違うのかわからなかった。康子のことは心から愛しているはずなのに。そう思う一方で、愛ってなんだか僕にはわかっていないとも感じていたし」
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