高値が高値を呼ぶ「令和のコメ騒動」は2025年も続くのか? 業者も「コメがどこにあるか分からない」と嘆く“コメ不足”の根本的要因
コメの在庫は異様に少ない
米価はどこまで上がるのか。今夏、コメが再び不足する可能性はあるのか。現段階でこの二つを正確に予測できる人はいない。
データから言えるのは、コメの民間在庫が異様に少ないということだ。グラフをみてもらえば、例年通りなら過去最低となった昨年(黄色)を下回るのは確実。
けれども、この民間在庫は全体をカバーしてはいない。農水省の示す通り〈民間在庫量は、(1)500トン以上の集荷業者、(2)4000トン以上の卸売業者が対象。およそ民間の流通在庫全体の75%をカバー〉するに過ぎない。いまは規模の大きい業者ほど集荷に苦労する傾向にあるので、網羅できる比率が下がっている可能性はある。
調査対象でない流通業者や農家が果たしてどの程度コメを囲い込んでいるのか。そして、高値を前に消費者がどのくらいコメを買い控えるのか。それによって今夏、コメの棚がどうなるかは変わってくる。
現段階で読めない変数の一つに、輸入がある。国の制度である「売買同時契約(SBS)」を使えば、1キロ当たり341円という高い関税を払う通常の貿易よりも安くコメを輸入できる。その年間の輸入枠である10万トンは、既に使い果たされている。
ところが、高い関税を払ってでも輸入する動きが出てきた。国内の相場があまりに高いので、原価が安い外国産米なら関税を乗せても割安で調達できる。実需側の安定調達への不安は大きく、国内の相場次第で今後こうした輸入が増えると見込まれる。
「神様」と呼ばれた怪しげな山師
それにしても、この情報化時代に、主食とされるコメの情報がこれほど表に出てこなくて良いのだろうか。コメを自由に取引できる市場はごく限られるので、業界関係者は相場を把握するために、FAXや新聞、冊子などで届くタイムラグのある相場情報とにらめっこしている。
何十年も前、あるコメの大産地には、その年の相場を言い当てる山師のような怪しげな人物が出入りし、「神様」と呼ばれたという。東京の情報が地方に届きにくい「情報の非対称性」で荒稼ぎしたわけだが、いまのコメ業界はその時代からどの程度変わったのだろうか。