金正恩の後継者は娘・ジュエで決まりか 「モデルはエリザベス女王」の驚愕証言も
ジュエの留学先はロシアに?
そばにロシア語の通訳もいたが、ジュエとマツェゴラの会話は通訳を介していない。モスクワ国際関係大学を出た彼は朝鮮語ができる。2006年から平壌にあるロシア大使館に勤務し、外務省第1アジア局長を経て2014年から大使の職にある。筆者は労働新聞の記事が気になった。マツェゴラを「国家首班の個人招請の客として」と書いていたからである。国家首班は金正恩を指すが、こうした賓客の紹介は極めて異例だ。「個人招請」としたのは、金正恩と彼がただならぬ親しい関係であり、長く家族ぐるみで交流があることすら想起させるのだ。
2022年にロシアがウクライナへ軍事侵攻して以降、北朝鮮はロシアを支持し、かつてない蜜月時代に入った。「包括的戦略パートナーシップ条約」も締結された。ロシアへ向け、北朝鮮は武器、弾薬の支援だけでなく、派兵にまで踏み切った。将来にわたり揺るぎない信頼関係を築くにはマツェゴラは金ファミリーの核心情報をつかんでいなければならない。諜報機関出身のプーチンは逐一、報告を受けているだろう。伝統的に北朝鮮は後継者問題について中国の理解を得ようと腐心してきたが、4代目はロシアの承認を急ぐのではないか。すでに了解済みとすれば、懸案のジュエの海外留学先はロシアになるかもしれない。
モデルはエリザベス女王か
さて、気になるのはこれからのジュエである。筆者は参考にすべき、北朝鮮当局の手になる事実上の「金正恩伝」といえる文献を入手した。後継者になるまでの歩みがドラマチックにつづられている。それによれば、金正恩は1998年10月1日、わずか14歳のときに両親と白頭山に登り、後継者になるとの宣言を初めてする。「白頭山の誓い」とされる。翌1999年の戦勝節(7月27日)には金星親衛第155軍部隊を訪れ、軍人たちと歴史的な談話を行う。文書は〈革命武力に対する最高領導者同志の初の現地指導であった〉と明記している。この軍部隊は米海軍情報収集艦「プエブロ号」の拿捕(だほ)にもかかわった対米決戦「勝利」のシンボルなのだ。
そしてドラマのラストは2005年5月17日。金正恩は祖父が生まれた平壌の万景台に出向き、「万景台家門の銃身の血統をしっかり受け継いでいく」と後継者になる決意を改めて固くしたというのだ。「銃身の血統」は核・ミサイル開発への強い意志だろう。すべては秘匿されていたが、2010年に彼が公式デビューするまでに、映画通でもあった金正日はかくも周到なシナリオを練っていたことになる。
金正恩はジュエを後継者にと思い定めているのなら、自身が経験した上記のようなコースを娘にもたどらせ、やがてそのプロセスをオープンにするだろう。
女帝が君臨する「シン・北朝鮮」。某国情報関係者からこんな驚愕(きょうがく)の未来像を聞いた。
「金正恩は英国の王室に興味を持っています。国民に愛されたエリザベス女王をモデルにしたいのではないでしょうか」
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