金正恩の後継者は娘・ジュエで決まりか 「モデルはエリザベス女王」の驚愕証言も
金正恩は統一を捨て、ロシアを後ろ盾にした核保有国「シン・北朝鮮」を最愛の娘、ジュエに引き継がせるつもりではないか。百年、いや、千年王国を夢見て。世界のインテリジェンスが注目するジュエにまつわる全情報をジャーナリストの鈴木琢磨氏が公開する。
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【写真を見る】「金正恩とそっくり!」 謎に包まれた愛娘・ジュエ 父の顔と比較すると
ジュエのプロファイルはベールに包まれている。4代目後継者だと断言まではできないものの、筆者はその可能性は高いとみる。金正恩のジュエへの溺愛ぶりが尋常でないからだ。金正恩は2015年10月、平壌を流れる大同江で父、金正日の願いでもあった豪華遊覧船「ムジゲ(虹)号」の就航を実現させた。4階建て、乗客定員は1230人。船内には朝鮮料理だけでなく、回転ずしならぬ最新式ベルトビュッフェレストラン、さらに野外デッキレストランまであり、世界中の料理が楽しめるという。
食糧不足の国に似つかわしくないぜいたくなグルメ船である。だが、この遊覧船こそ、ジュエを軍や党幹部へ披露する舞台となっていたのだ。就航に先だつ9月28日、労働新聞1~2面をつぶし、金正恩が遊覧船を妹の与正らと視察する記事が載るが、その場に幼い娘を連れてきていたとの複数の目撃情報がある。ジュエは2013年2月生まれとされるから、2歳だ。記事に添えられた17枚の写真にジュエらしき姿はないが、金正恩は娘を幹部らに紹介、終始、ご機嫌だったという。
なぜ、9月28日に報道したのか? 実はこの日は金正恩が愛する妻、李雪主26歳の誕生日だったのだ。中世さながらの王朝国家ゆえ、北朝鮮は金正日の母(金正淑)、金正恩の母(高ヨンヒ)を「尊敬するオモニム(お母さま)」とたたえてきた。夫をそばで支えるだけではない。最も重要な役目は世継ぎを産むことにある。儒教色が濃く、男児が「世子」となるのが一般的だが、わざわざ妻の誕生日に合わせ、娘をゴージャスな船上でデビューさせたのはいわくありげだ。妻への慰労の意味に加え、金正恩はすでにこのとき娘を後継者にと考えていたのではないか。
風貌がそっくり
そもそも金正恩に娘がいて、その名が「ジュエ」らしいと分かったのは2013年9月のことである。金正恩が大ファンの元米NBA選手のデニス・ロッドマンを北朝鮮に招待し、そのロッドマンが金正恩の別荘で初めて娘に会ったことを帰国後、明かしたのだ。女の赤ちゃんをだっこし、名前が「ジュエ」だと金正恩から直接聞いたという。聞き間違えた可能性もあるが、ロッドマン訪朝に同行した、筆者も知るカナダ人通訳は朝鮮語に堪能だった。ハングル表記まできちんと確認できなかったにせよ、発音は「ジュエ」にほぼ近いだろう。
「遊覧船でのお披露目後も金正恩は娘をあちこち連れ歩いていたと高位級脱北者の証言から把握しています。風貌が自身とそっくりだったのがうれしかったのでしょう。金正日が金正恩を後継者に選んだのは金正恩の兄、正哲の性格が内向的でリーダーにふさわしくなく、細面の母親似だったからだといわれています。金正恩の容姿は金日成から続く革命の聖地・白頭の血統であることが一目瞭然ですから」。そう語るのは日朝関係筋だ。また元「金正日の料理人」、藤本健二は2016年4月に訪朝した当時、筆者にこう語った。「正恩氏や与正氏らと食事をしましたが、李雪主夫人はいなくて。正恩氏に尋ねると、娘が風邪をひき、一緒に隔離中とのことでした」。娘の存在を隠すふうではなかったらしい。
そんなジュエが白いダウンジャケットを着て公の場に現れたのは2022年11月である。ICBM(大陸間弾道ミサイル)「火星17型」の発射に立ち会った父の金正恩に同行したのだ。
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