里親家庭から推薦で大学も、夜の世界に狂ったのちアイドルに…「地獄みたいな半生」で見つけた救いとは

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雇われ店長の現在

 一方で、グループ活動については、

「『夏の魔物』には2年近くいましたが、運営の人間からそういう関係を迫られてるメンバーとかもいました。ベビーとヒールに分かれたグループで、私はヒール側にいたんですけど、ある時突然プロデューサーが『ヒールはいらない。俺はバンドをやるんだ』と言ってきて、そのままヒール側だった子は全員クビになりました。当時はネットで文句を書いている子もいましたね。ひどい人間だったと思うんですけど、私は感謝もしていて。『夏の魔物』を経験したことで、アイドルも飲み屋もお客さんを全力で楽しませることでは同じエンタメなんだと感じて。それが今の仕事につながってます」

 アイドルグループを辞めた後、ムンさんは改めてシンガー・ソングライターとして活動をしつつ、ゴールデン街で店長して生活。その後は音楽関係で知り合った男性と結婚したが、現在は離婚している。

 そして現在、千葉・柏市にあるコンセプトカフェで雇われ店長をしている。

「もともとはライブバーだったんですけど、全然お客さんがこなくて。それでコンカフェスタイルにしてます。アーティストの方たちが働ける場所を作りたいっていう気持ちで立ち上げた店で、今働いている子はアーティストや地下アイドル、漫画家とかで、のびのびと働いてくれてます」

 ムンさんが今、住んでいるのは家賃の安いシェアハウスだ。壁が薄く、夜な夜な隣の部屋に住む男性が「もうちょっと脱いで」とチャットレディと話す声が聞こえてくるそうだ。

「もう勘弁してくれと思いながら寝てます(笑)。でも住むところにはこだわりないんですよね。子供の頃は虫とかネズミとかいる倉庫に住んでいたわけだし」

両親を恨んだことはない

 普通の人ならば心が折れてしまうようなことが、ムンさんの人生には何度もあった。だが、一度も両親を恨んだことはないという。

「綺麗事になっちゃうんですけど、自責の人なんですよ。両親についても、逆にかわいそうだなって。私の人生についても親に責任があるとは思わないですし、仕方がなかったんだよねと思っていて。そういうこともあるよねって」

 柏の街を夜が包み、ネオンに灯がつく頃、ムンさんの店が開く。店内では時には全身タイツを着て暴れ回り、客の笑いを誘う。来た人を楽しませたいという気持ちはアイドル時代からずっと変わっていない。

「私って地獄みたいな半生じゃないですか。でも、それを助けてくれたのが音楽だったりエンタメなので。お客さんもいろいろな地獄を抱えていると思うんです。それを私に会うことや、お店に来てもらうことで少しでも軽くしたいんです。私に会う前よりも、会った後の方が人生楽しかったと思ってほしいんです」

 ***

 ムンさんの人生は幼少時から壮絶だった。詳細は記事前編で詳しく紹介している。

徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。その後、テレビ局のオウンドメディア編集長を経て、現在はフリーライターとして雑誌、ウェブで記事を執筆している。2025年1月24日には日本初のグラビアガイドブック「一度は見たい! アイドル&グラビア名作写真集ガイド」(玄光社)が発売される。 X:@tatsunoritoku

デイリー新潮編集部

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