銀行の「特殊詐欺」対策によってヤクザに“仕事の依頼”が殺到する皮肉…詐欺の“被害者”が暴力団に助けを求めるのはナゼか

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ヤクザと警察の未来は共に安泰!?

「自分のところだけでも多い時は一日で5、6人からこういう相談を受けますよ。新規口座開設詐欺の相談バブルですよ。もう今の日本は狂ってますわ」(某組幹部)

 さらに、騙された人は「騙され癖」があるのか、1件が解決すると「実は、もう1件ありまして」と一人の被害者から次から次へと複数の相談を受けることも多く、取材に応じてくれた某幹部は「忙しくて時間が足りない」と言う。

 警察は秘匿性の高いアプリを駆使して犯罪を繰り返すトクリュウを追いかけている。その中で間接的なつながりだとはいえ、オレオレ詐欺や闇バイトなどの犯罪で得た収益をマネーロンダリングされることを恐れる金融機関が審査を必要以上に厳しくしたことで、新しい詐欺被害が発生する。それを解決してほしいと暴力団に依頼が殺到している。まさに無限ループのような状態ができあがっているのだ。

「悪は一旦の事なり」とは、悪事は長く続かないという意味のことわざだ。その一方で、稀代の大泥棒・石川五右衛門は「石川や浜の真砂は尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ」という辞世の句を残した。

 この句は「物品や金銭を盗んだり、騙し取ったりすることは、この世の中からはなくならない」という意味だろう。

 石川五右衛門の指摘を敷衍すれば、この世から犯罪者が消えることはない。そのため、どれほど衰退しても暴力団やヤクザが活躍する場所は常に存在するし、どれほど不祥事で国民から批判されても警察が消滅することはない。そんなことが言えるのではないだろうか。

 第1回【「トクリュウ犯罪」を仕切っているのはヤクザじゃない? 暴力団員が「指示役」でも「使い捨ての実行役」でも逮捕される理由】では、トクリュウの指示役に暴力団幹部が君臨することもあれば、暴力団員が末端の実行役を担うこともあるという矛盾の原因である、貧困に苦しむ暴力団員の姿を詳細に報じている──。

藤原良(ふじわら・りょう)
作家・ノンフィクションライター。週刊誌や月刊誌等で、マンガ原作やアウトロー記事を多数執筆。万物斉同の精神で取材や執筆にあたり、主にアウトロー分野のライターとして定評がある。著書に『山口組対山口組』、『M資金 欲望の地下資産』、『山口組東京進出第一号 「西」からひとりで来た男』(以上、太田出版)など。

デイリー新潮編集部

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