銀行の「特殊詐欺」対策によってヤクザに“仕事の依頼”が殺到する皮肉…詐欺の“被害者”が暴力団に助けを求めるのはナゼか

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750万円の被害

 新規の法人口座開設については、銀行側から指示された公的書類を含む全ての書類を提出し、会社の所在確認や営業の実態調査まで受けたにもかかわらず、審査内容の説明すらないまま「当社規定の審査結果により……」と断られるのが当たり前となっている。これほど厳格だと、通常の会社でも営業活動に悪影響が出てしまう。そこで登場するのが、新規口座開設を条件に金品を騙し取る詐欺師たちなのだ。

「私に任せていただければすんなりと新規口座開設ができますよ。銀行とは特別なパイプがありますので大丈夫です。ただし費用が掛かります。その費用は前払いとなります」

 このような誘い言葉で、新規口座開設を求める社長や資産家たちから、ありとあらゆる費用名目(新規口座開設手数料や紹介料や新規口座に貯金する最初の見せ金費用など)で現金を騙し取る。

 某資産家は、「新規口座開設時に口座に入れる金額が多ければ多いほど、銀行に話が通りやすい」という説明を受けて700万円を詐欺師に騙し取られてしまった。この金額の他にも着手金として50万円を最初に詐欺師に渡してしまっているから、被害総額は750万円にのぼる。

依頼は現金回収と復讐

 銀行は犯罪防止のために新規口座開設の拒否件数を増やしたのに、そのために新たな犯罪が生まれているとなればまさに本末転倒でしかない。そして、詐欺師たちからすれば、銀行によって不便が生じれば「人の弱みにつけ込んで騙す」という詐欺の基本ロジックにピッタリと当てはまるので、手慣れた手口で詐欺ができるから楽勝パターンだ。

「昔よくあった大学の裏口入学みたいなもんですよ。親がカネさえ払えば、子供は医学部にも入学できましたよね。それと同じ感じで、表からじゃ無理でも裏でカネを払えば大手銀行だろうがどこの銀行だろうが新規口座開設がすぐにできるんですよ」

 という説明でカネを掻き集めるのが最近の詐欺師たちの必勝パターンだ。

 そして被害者の社長や資産家たちは途方に暮れる。正規の方法ではない裏技で新規に口座を開設しようとしたことで罪の意識があり、警察に通報するのをためらってしまう。弁護士に相談しても、口約束で現金を手渡している場合などは手元にある証拠が少ないので事件として立件が困難なため、泣き寝入りするしかないと言われてしまう。

 警察にも弁護士にも頼めないとなると、困った被害者は「ヤクザに頼もう」と考える。もちろん被害者の全員が実際に連絡するわけではないが、騙し取られた現金を回収し、詐欺師を懲らしめてほしいという想いに駆られ、暴力団に“被害額の回収と復讐”を依頼するのだ。

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