銀行の「特殊詐欺」対策によってヤクザに“仕事の依頼”が殺到する皮肉…詐欺の“被害者”が暴力団に助けを求めるのはナゼか
第1回【「トクリュウ犯罪」を仕切っているのはヤクザじゃない? 暴力団員が「指示役」でも「使い捨ての実行役」でも逮捕される理由】からの続き──。トクリュウと暴力団の関係を考える際、重要なのは“組員の貧困”問題だ。(全2回の第2回)【藤原良/作家・ノンフィクションライター】
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確かにトクリュウを束ねる指示役として指定暴力団系の組幹部が逮捕されたのは事実だ。しかし、その一方で組員が末端の実行役として、わざわざ闇バイトに応募して逮捕された事例も存在する。
ある暴力団員はトクリュウの上部に君臨し、ある暴力団員は実行役として最下層に位置する──この矛盾を解くのが“ヤクザの貧困化”だ。
幹部も組員も収入の激減に苦しんでおり、リーダーシップに優れた幹部はトクリュウを束ね、そうではない組員は闇バイトに応募する。共に組には内緒の“副業”で、収入は自分の財布に入り、組に上納されることはない。
浮かび上がるのが日々の食事代にも困るヤクザの姿だ。「ヤクザは、まだ生き残っている」という言い方のほうがイメージしやすいだろうか。現在の暴力団業界は、どこから見ても繁栄が期待される成長業界ではなく、年々組員の減少が著しい衰退局面を歩んでいる。
シノギの傾向で言うと、都市部の暴力団のほうが暴対法や暴排条例等の規制でほぼ壊滅状態に陥っているケースが多く、地域密着型でやっている地方の暴力団のほうは、昔から携わっている何かしらの正業を維持できている場合が多い。
詐欺被害者がヤクザに相談
都市部の暴力団と比べると地域密着型は「毎日何かしらの仕事(=正業)がまだできている」という状況だ。正業だから犯罪ではなく、例えば外国人労働者と一緒に肉体労働で汗を流している暴力団員もいる。
下請けの就業規約としてはグレーゾーンだろうが、彼らがこういった仕事に就けるのも日本社会の慢性的な人手不足が影響している。どの道、現在の暴力団は決して楽ではない。
そんな彼らのもとに昨今、一般人から“相談”が多数、持ち込まれているという。「反社」と呼ばれて久しい暴力団に対して人々はいったいどのような相談をするのだろうか?
一言でまとめると、「詐欺被害者からの銀行口座開設に関わる相談」である。近年、金融機関は特殊詐欺や反社対策、マネーロンダリングなどの犯罪防止を目的として、新規口座開設の審査を厳重にしている。
ひと昔前なら、誰でも簡単なやり取りだけでその日のうちに新規口座開設が可能だったが、現在は「当社規定の審査結果により口座開設をお断りします。審査内容につきましてはお教えできません」と一方的に断ってくるケースが増えている。
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