「トクリュウ犯罪」を仕切っているのはヤクザじゃない? 暴力団員が「指示役」でも「使い捨ての実行役」でも逮捕される理由

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「トクリュウをやるヒマはない」

 この状況で、窃盗と詐欺のオンパレードであるトクリュウを組単位で行っていくには、いささか無理がある。やはり現役の暴力団員が、トクリュウ関係のシノギをするとしたら、それが指示役であろうが実行役であろうが、組の意思とは何ら関係のない個人プレーで臨むしかない。

 現時点においては、シノギに困った暴力団員が、生活費などを稼ぐためという個人的な動機でトクリュウに加わる、又は、同じ理由でトクリュウを束ねるといった状況となっている。某暴力団幹部は次のように解説する。

「破門になった奴とか、現役の暴力団員でもカネに困って破門覚悟でやる奴とか、組から飛んで音信不通になった奴とか、そういう連中が逮捕されたらトクリュウやってました、といった話ですよ。自分に言わせるとレンタカーでタタキ(強盗)やるとか、家に押し入って老人を殴るとか、全く理解できませんからね。それに指示役はヒマな奴じゃないとできません。シゴトが済んでカネが手元に届くまで、ずっと待たなきゃならないし、実行役に『何時何分にここに行け、あそこに行け』と命令する必要があるでしょ。自分らは組の集まりや親分の用事で忙しいですからね。トクリュウやってるヒマがありませんし、やりたいとも思いませんよ」

警察も実態を把握!?

 誰か別の人間にトクリュウの指示役を任せるにしても、全てのシゴトを丸投げするわけにもいかない。警察に摘発される可能性が高くなってしまう。

「サツだって本当は、トクリュウを組が操っているわけではないって分かっていますよ。でも、暴力団がらみだって発表すれば、新しい法律も作りやすいでしょうし、トクリュウは悪いってイメージを国民に植え付けやすいでしょうしね」(同・暴力団幹部)

 では、昨今の暴力団員たちはいったいどんなシノギを行っているのだろうか?

 組には内緒でトクリュウの実行役や指示役を引き受ける“貧困組員”が続出していることは事実だ。困窮者を抱えている暴力団業界の実態はどのようなものなのか、第2回【銀行の「特殊詐欺」対策によってヤクザに“仕事の依頼”が殺到する皮肉…詐欺の“被害者”が暴力団に助けを求めるのはナゼか】では、その衝撃の真相をお伝えする──。

藤原良(ふじわら・りょう)
作家・ノンフィクションライター。週刊誌や月刊誌等で、マンガ原作やアウトロー記事を多数執筆。万物斉同の精神で取材や執筆にあたり、主にアウトロー分野のライターとして定評がある。著書に『山口組対山口組』、『M資金 欲望の地下資産』、『山口組東京進出第一号 「西」からひとりで来た男』(以上、太田出版)など。

デイリー新潮編集部

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