「日本製鉄はさっさと900億円払って手を引いた方が」 “代償”として得られるものとは

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買い手側に非がなくても支払い義務が

「インフィニティ」チーフエコノミストの田代秀敏氏が解説する。

「違約金は、正確にはリバース・ブレークアップ・フィー(RBF)といい、米企業を対象としたM&Aでは当たり前に盛り込まれる契約条項の一つです。買い手側に非のない、政治判断による未履行でも支払い義務が生じるケースは珍しくなく、通常、買収金額の1~5%程度に設定されます」

 日鉄とUSスチールが買収に合意したのは2023年12月。買収額は約141億ドル(約2兆円)と発表されたが、同額のTOBとなった日本産業パートナーズと東芝のケースでは「RBFは約20億円」(前出デスク)だったとされる。

 経済ジャーナリストの町田徹氏によると、

「日鉄側はUSスチール株の取得価格を〈1株当たり55ドル〉としましたが、これは合意発表前の同社株に40%ものプレミアムを上乗せした価格でした。アメリカ側への配慮が買収額だけでなく、RBFにも反映された可能性はあります」

消えた「買収メリット」

 さらに日鉄は昨年、追加の設備投資(4200億円相当)や、従業員1人につき5000ドル(約78万円)の一時金を支払う約束など、大盤振る舞いを連発。

「雇用削減や施設閉鎖も行わないなどの譲歩も重ねたため、買収メリットそのものが大きく減じていました。仮に買収が実現しても、期待通りの効果が得られるかは不透明な状況に陥りつつあったのです。900億円を払ってでも手を引いた方が、結果的に“傷口を最小限に抑えられる”と、思考を切り替える良い機会ではないか」(町田氏)

 救いの手を差し伸べたつもりが、まさかのシッペ返し。とんだ横暴に、日本政府はなぜもっと怒らない。

週刊新潮 2025年1月16日号掲載

ワイド特集「笑う門には福来たる」より

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