「コメ農家の時給は10円」 2025年もコメ不足は続くのか…「減反を続ける政府の責任」

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米余りをなくそうとする政府

 山中さんの推計では、見通しと実際の需要との差は13万トン前後である。

 農水省が24年10月30日に発表した需要量は23年秋の見通しを23万トン上回ったが、23年産の主食用米の収穫量661万トンに対してわずか3.5%に過ぎず、深刻な米不足を起こす要因とは思えない。では、何がスーパーの棚から米を消したのだろうか。

「需要に対する生産量が非常にタイトで、消費の変動をカバーできなかったんです。政府は米余りをなくそうとして、全農などと調整して収穫量を毎年減らしていますが、21年に過去最大級の補助金を出して主食用米を飼料用米や加工用米に転作させ、水田を畑に変えて“減反”を強行しました。その結果、21年産まで700万トン以上はあった主食用米の収穫量が、22年産は一気に30万トン減の670万トンに、23年産は661万トンまで減少したのです。結局のところ、すべてこれが原因です。もし23年産が700万トンだったら、たとえ需要が予想より20万トン増えたところで、たいした影響はなかったはずです」

「減反」を強行してきた政府の責任

 だったら増産すればいいのにと思うが、政府はそうしたくないようである。

 戦後の日本は米余りが続き、1970年代から減反政策を取ってきたが、安倍政権は「減反政策は終わった」として2018年に廃止した。しかしこれはまやかしで、減反政策は、形を変えて今も続いている。それが山中さんの述べた、主食用米から大豆や家畜に食べさせる飼料用米への転作を促す補助金政策である。

 しかも、20年に新型コロナウイルスがまん延する。外食産業の売り上げが激減して、米の在庫がだぶつき、米価が大幅に下落した。政府はその対策として、主食用米から飼料用米への転作を加速させる。20年まで飼料用米の作付面積は7万ヘクタール前後が続いていたのに、22年は急激に14万ヘクタールにまで広がっているのがそうだ。

 ところが農水省は、コロナ禍が収まった後もこの「減反」を続けた。

「コロナ禍で米が余り、農協と全農が長期にわたって保管したからその負担が重かったのでしょう。それを国が補填したから財務省がうるさかったようで、米余りを避けたいのです」

 農協を守る意味もあったのだろう。今も米の生産量を、毎年10万トンを目安に減らし、需要に見合った量に抑えて米価を維持している。反面、生産量に余裕がないから、ちょっとしたことで米不足になるのである。令和の「米騒動」が起こったのは、数字だけを見て、節約一辺倒で「減反」を強行してきた政府の責任といえる。

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