「コメ農家の時給は10円」 2025年もコメ不足は続くのか…「減反を続ける政府の責任」

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「スーパーを守ろうという気持ちはないね」

 在庫を持たない米問屋などは「買えるときに買ったほうが勝ち」とばかり買いに走ったという。5月の連休が明ける頃には、買いが買いを呼んで民間市場では2万4000円(60キロ)を超える異常な相場になっていた。やがて8月8日に南海トラフ地震を想定して「巨大地震注意」が発表されると、あっという間にスーパーの棚から米が消えてしまった。

「実は、米がなかったわけではないんですよ」と山中さんは意外なことを言う。

「ただ在庫は限られていましたので、スーパーに卸すか、年間契約している病院や飲食店、外食産業に卸すかでずいぶん悩みました。米がなければ外食産業は営業できないし信用にも関わります。病院は入院患者に影響します。結局、ほとんどの問屋はスーパーには量を絞って納入し、外食産業などを優先しました」

 山中さんはこう言ったが、関東のある問屋はこんな本音を語ってくれた。

「スーパーは一定量売れるから取引しているが、市場価格が安くなると値段はたたかれるし、売れ残ったら引き取らされるんだから、消費者には申し訳ないが、スーパーを守ろうという気持ちはないね。米が足りなくなったら、次回も真っ先にスーパーから消えると思うよ」

三つの理由

 それにしても1993年のような冷害があったわけでもないのに、なぜ主食の米がスーパーの棚から消えてしまったのだろう。米が不足した直接的な原因について、山中さんは次の理由をあげた。

1.日本海側の米の品質が悪く、精米時の歩留まりが下がった。

2.おにぎりブームで、国民1人当たりの米の消費量が増えた。

3.みそ、醤油に使う加工用米も不足していたため、主食用米が使われた。

 異常気象のせいで、2023年産は日本海側の米どころが不作に加えて質も悪く、精米時の歩留まりが1.4%ほど低下したと山中さんは言う。また、おにぎり人気のおかげで、全国のおにぎり店がここ数年で2000軒を超えたそうで、結果的に国民1人当たりの米の消費量も増えたという。ただ、それでも全体で数万トンだろう。みそ、醤油に使ったのは1万~2万トン程度だろうし、インバウンドの増加で米の消費量も増えたが、想定外ではなかったはずだ。

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