「八角理事長」が是が非でも「琴櫻と豊昇龍」を「ダブル昇進」させたい“大人の事情” 横綱不在が許されない“34年ぶり大イベント”とは
大相撲初場所(東京・両国国技館)が12日、初日を迎える。昨年は「全6場所90日間満員御礼」という大盛況の1年だったが、今年はいきなり初場所後の新横綱誕生、しかも2名同時誕生の可能性が生じている。昨年の九州場所で初の幕内最高優勝を果たした琴櫻(佐渡ヶ嶽部屋)と、優勝次点の豊昇龍(立浪部屋)。八角理事長(元横綱・北勝海)はじめ協会幹部は、両大関のダブル昇進に向け、マスコミに対し、機運醸成を図っているのだ。2人を是が非でも横綱にしたい“裏事情”とは――。
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【写真】比べるとそっくり! 母親と瓜二つの琴櫻、叔父さんと酷似する豊昇龍
初場所前の1月5日、横綱審議委員会(横審)による稽古総見が行われた。関取衆の状態を協会幹部たちがチェックする大事な行事だ。総見後、八角理事長は、「今場所(優勝)の1番手!」「立ち合いで当たってからの流れ。前に出ようという気持ちが出ていた」と豊昇龍を誉めそやした。豊昇龍は総見終盤には横綱・照ノ富士、大関・大の里との三番稽古(同じ相手と続けてとる稽古)の後、再び3大関(豊昇龍、琴櫻、大の里)による申し合い(勝ち残りがとり続ける稽古)を行い、抜群のキレを見せつけた。とりわけ、先場所優勝を争った琴櫻相手に8勝1敗。八角理事長は「最後に琴櫻ともう、10番くらいやれば100点満点だった」と大絶賛だった。
「厳しい八角さんがここまで言うとは驚きました。八角さんはとりわけモンゴル勢には辛口で、豊昇龍に対しても、普段は“立ち合いがなっていない”とか“礼を失している”などとコメントすることも。それが今回は手放しの褒めようですからね。豊昇龍の充実ぶりをアピールしようとしているのだと思いました」(大相撲担当記者)
流れは出来ている
一人横綱の照ノ富士が全休した昨年の九州場所。優勝争いは、琴櫻と豊昇龍による21年ぶりの大関千秋楽相星優勝決戦となった。この一番を、はたき込みで制した琴櫻は14勝1敗で初優勝。豊昇龍は13勝2敗、優勝次点で場所を終えた。ちなみに琴櫻は佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若)の息子、豊昇龍は元横綱・朝青龍の甥っ子というサラブレッドだ。
横綱昇進の内規は「2場所連続優勝かそれに準ずる成績」。実質的には連続優勝した大関は自動的に綱を手にする。平成以降、横綱昇進した11名の力士の成績を見ると、8名が連続優勝を果たしている。初場所で言えば、琴櫻が制した場合のみ、これに該当することになるが、
「今の協会幹部の雰囲気では、豊昇龍が優勝、琴櫻が次点なら、場所後に同時昇進をプッシュしようというムードが広がっています。あるいは、2人が先場所同様、相星で千秋楽までトップを並走するようなことがあれば、楽日の結果にかかわらず、同時昇進の話が出てくるかもしれない。そんな雰囲気にまでなっています」
実際、昇進に向けてもう1人のキーマンと言える、高田川審判部長(元関脇・安芸乃島)は九州場所千秋楽後、2人の綱とりについて「来場所が楽しみ」と述べている。歴代の審判部長の見解は横綱昇進の最初の関門だ。審判部長が「もう少し見てみないと」「まだ無理」など、そっけない返答をするときは、話は動かない。その“暗黙のルール”に従えば、高田川審判部長の発言は、2人の昇進に前のめりになっていると見て良い。同時昇進が決まれば、1970年初場所後の北の富士、玉の海(ともに故人)以来で史上6例目。55年ぶりの快挙となるが、高田川審判部長は「そうなってほしい」とも言い切った。“流れは出来ている”と見て良い。
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