「もうええでしょう」だけじゃない! “ピエール瀧”がネトフリ作品に欠かせない俳優となった理由 異業種から抜てきされるバイプレーヤーの魅力とは
リリー・フランキーの魅力
瀧と映画「凶悪」(13年)で共演し、各映画賞の助演男優賞を分け合ったのが、俳優業以外に文筆家・画家などマルチな才能を持つリリー・フランキー(61)。
もともと、ラジオの構成、作詞家、イラストレーターなど裏方での活動がメインながら、業界内ではその存在が知られていた。独特のタッチで描かれた01年発行の絵本「おでんくん」がアニメ化され話題になり、母親との半生をつづった長編小説「東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~」(扶桑社刊)が05年に発売され、200万部突破の大ベストセラーとなる。そして、04年公開の映画「盲獣vs一寸法師」で俳優デビューを果たした。
映像作品の出演を重ねる中、法廷画家の役を演じた「ぐるりのこと。」(08年)、1999年に実際に起きた凶悪殺人事件「上申書殺人事件」を基にした「凶悪」の悪徳不動産ブローカー役で映画賞を受賞することになった。
「その辺にいそうな酒好きのおじさんみたいな雰囲気を漂わせていますが、“ゾーン”に入ると雰囲気が一変。驚くべき演技力を見せてくれます。カットがかかると、とても気さくで、共演者にもスタッフにもフランクに接してくれるので、瀧さん同様、業界内のファンは多く、オファーは絶えないでしょう。ビートたけしさん、明石家さんまさん、片岡鶴太郎さん、故いかりや長介さんら、本業がお笑いの人は、ミュージシャンと同じく自分の見せ方を知っていて、コントで自然と演技を磨いている。転身しても成功する人が多いのはそのせいでしょう。でも、異業種からの転身組でリリーさんほどの成功例といえば、元プロ野球選手だった板東英二さんぐらいでしょう」(テレビ局関係者)
1月24日スタートの広瀬すず(26)主演のTBS系ドラマ「クジャクのダンス、誰が見た?」では、広瀬演じる主人公の、クリスマスイブの夜に殺された元警察官の父親役を演じ、こちらも好演が期待される。
一度見たら忘れない
もうひとり、ここ最近は映像作品に引っ張りだこなのが、お笑いタレントでミュージシャンのマキタスポーツ(54)だ。マキタも「地面師たち」で、地面師グループに大手不動産会社を紹介する地上げ屋を好演。テレビ朝日系昨年10月期の連続ドラマ「ザ・トラベルナース」では総合病院の医師を演じた。
その芸名は実家のスポーツ用品店の屋号から。大学卒業後、社会人、フリーターを経て、お笑いコンビ・浅草キッドが主催していた「浅草お兄さん会」で28歳で芸人デビュー。ギターを弾きながらの、歌ネタを得意芸にしていた。
「ギターの弾き語りで時事ネタや世相を斬るネタがありますが、かなり過激なので、テレビ向きではありませんでした。芸風が玄人好みでギョーカイ受けはよかったものの、なかなか芸人としてブレイクしきれない中、俳優業に進出していました」(同前)
西村賢太さんの小説を映画化した「苦役列車」では、主人公の職場の先輩役を好演し「第55回ブルーリボン賞」、「第13回東京スポーツ映画大賞」の新人賞を受賞。挿入歌「俺は悪くない」を担当した。
その後、NHKの連続テレビ小説「花子とアン」(14年)、「エール」(20年)、大河ドラマ「おんな城主 直虎」(17年)、「いだてん~東京オリムピック噺~」(20年)。映画でも「忍びの国」(17年)、「さんかく窓の外側は夜」(21年)、「前科者」(22年)、「ゴールデンカムイ」(24年)などの続々と出演を重ね“爪痕”を残している。今年は2月8日に時代劇専門チャンネルで放送予定の「鬼平犯科帳 老盗の夢」に出演する。
瀧、リリー、マキタら、生粋の俳優ではなく、異業種から転身し、今や映像作品には欠かせないバイプレーヤーとなった理由はどこにあるのだろうか。
「3人とも、まず、そのビジュアルは一度見たら忘れませんし、キャラクターに強烈なクセがあります。もともと演技のトレーニングを受けたわけではなく、現場を重ねることで自分なりに俳優としてのスキルを磨いて来ました。瀧さんとマキタさんは音楽、リリーさんはアートや文章の才能があり感性が豊か。演技力にそうした感性を掛け合わせれば、並の役者では相手になりません。また、3人ともトーク力が抜群なので、作品のイベントに登場すれば確実に盛り上げてくれますし、撮影現場でもムードメーカー。貴重な存在です」(映画担当記者)