今年も「阿部巨人」の優勝が固い“大補強以外の理由” 「野村IDの申し子」「魔改造」2人の名コーチとは

スポーツ 野球

  • ブックマーク

マー君を預けていいですか

 一方の久保康生・巡回投手コーチは、近鉄、阪神でプレーし、1997年に引退。近鉄、阪神、ソフトバンクでコーチを務め、2023年シーズンから巨人入り。2年間不調に陥っていた菅野の再生に着手。菅野は今季15勝を上げ、最多勝とMVPに輝くなど、見事復活を遂げた。

「菅野のフォームを改造させた。軸足をしっかり使い、体重移動の流れの中で握った球に力を込めることを意識させました。菅野も当初は半信半疑でしたが、結果が出るに連れて信奉者となりました。“魔改造“の異名もついている久保コーチは阪神コーチ時代には今季から指揮を執る藤川球児監督も再生しています。岩隈久志(元近鉄など)や能見篤史(元阪神など)もエースに育成した名伯楽です」(巨人担当記者)。

 阿部監督はその久保コーチに、

「獲得するかどうか迷っていた田中将大について相談しています。久保コーチは菅野と同じく、田中は十分復活できるという結論でした」(同)。

 この正月、阿部監督はスポーツ報知のロングインタビューでこう答えている。

《久保さん(久保康生巡回投手コーチ)と話す機会あって。マー君どうですかと聞いたら『菅野と一緒なんだよね』と言っていて》

《久保さんに『マー君を預けていいですか』と言って。久保さんに付きっきりでやってもらおうかなと思っている。あれだけ投手をいじれる人っていないから。すごい貴重だと思う。そういう話を本人(田中将大)にも直接した》

 昨季15勝をマークした菅野の穴をどう埋めるかが今季の巨人の投手陣の最重要テーマ。その筆頭候補である田中の再生を託されたのが、久保コーチというわけだ。

ITの導入

 橋上コーチの指導には「頭で考える」野村ID野球が根底にある。巨人も他球団に遅ればせながらIT化を進めてきた。17年にはデンマーク製の弾道測定マシン「トラックマン」と、投手が投げるボールのキレなど数値化する高性能カメラとレーダーを搭載した移動式測定器「ラプソート」、そして22年にスイングスピードや走者の動きなどを3Dのイメージ映像にして動作解析をするシステム「ホークアイ」も導入したが、結果として出たのは昨季4年ぶりとなるリーグ優勝だけだ。橋上コーチは「名捕手だった阿部を名監督にする“意欲満々“です」(チーム関係者)。球団からは最新の「iPad」を支給されて来月1日の春季キャンプに向けて着々と準備中。

 巨人には連覇、そして日本一への条件が整ったが、さて結果はいかに――。

小田義天(おだ・ぎてん) スポーツライター

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。