ゼレンスキー大統領が「北朝鮮軍の一個大隊が全滅」と発表 訓練不足の北朝鮮兵は銃を乱射して同士討ち…ロシア兵捕虜も「正気の人間ではない」と証言
「大本営発表」という言葉は、国語辞書の『広辞苑』(岩波書店)にも『大辞林』(三省堂)にも掲載されている。表記の細かな違いはあるが、共に1番目は「大本営が発表した戦争に関する情報」と説明し、2番目には「権力を持つ側が一方的に発表する、自分に都合のいい情報」と記している。現代の戦争は太平洋戦争の時より情報・謀略戦が高度化しており、それはウクライナとロシアの戦争でも例外ではない。
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つまりウクライナとロシアの両国が争うようにして“大本営発表”を行っているとしても不思議ではないのだ。そうした観点から、ウクライナのゼレンスキー大統領の発言を見てみよう。
1月4日に行われた定例のビデオ演説で、大統領は「ロシアのクルスク州での戦闘で、ロシア軍は一個大隊の北朝鮮軍歩兵とロシア空挺部隊を失った」と発表した。
この発言を報じたロイター通信は《大隊の規模はさまざまだが、一般的には数百人の部隊で構成される》と補足した(註)。担当記者が言う。
「ゼレンスキー大統領が明かした戦果を“大本営発表”と疑う関係者が存在するのは当然でしょう。虚偽の発表でロシアや北朝鮮に揺さぶりをかけている可能性は否定できません。しかし『北朝鮮軍が相当な戦死者を出している』ことなら傍証もあり、事実だと考えられます。例えば大統領は昨年末、『北朝鮮軍の死傷者は3000人を超えた』と胸を張りました。一方、韓国の合同参謀本部は『死傷者は1100人余り』、アメリカの当局は『死傷者は数百人』と発表しました。死傷者の数が異なるのは事実ですが、北朝鮮軍がクルスク州の最前線で敗北を重ねていると判断すること自体は間違っていません」
戦死が相次ぐ北朝鮮軍
昨年8月、ウクライナ軍はロシア国境を越え、クルスク州に奇襲攻撃を行った。不意を突かれたロシア軍は逃走。ウクライナの占領地は最大で約1400平方キロメートルの広さに達した。これは東京23区の約2倍の面積であり、北海道釧路市の面積に匹敵する。
「ロシア軍は部隊を立て直して反撃を開始します。10月には北朝鮮軍が援軍としてクルスク州に入ったことも確認されました。北朝鮮兵にはロシア軍の軍服が支給され、ロシア軍の訓練を受けました。ウクライナ国防省は約1万1000人の北朝鮮兵が州内に駐留していると推定しています。11月中旬、北朝鮮軍がロシア軍と行動を共にしていると、ウクライナ軍と遭遇して初めて戦闘状態に入りました。ロシア兵と北朝鮮兵は偵察が目的で、戦闘自体は小競り合いと言える内容でした。にもかかわらず、北朝鮮兵にはかなりの戦死者が出たことが明らかになっています」(同・記者)
12月に入ると北朝鮮兵は本格的に戦場に投入され、先述した通り相当数の戦死者を出し続けている。大きな理由の一つとして、ロシア軍が人命無視の人海戦術を北朝鮮兵に強いていることが挙げられるだろう。しかしながら、そもそもの問題として北朝鮮兵は訓練が不足しており、その練度も低いようなのだ。
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